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「パリコレ学」が徹底していたのは「スタッフはモデルと私語をしない」――山内健太郎ディレクターに独占取材2019/04/14

「パリコレ学」が徹底していたのは「スタッフはモデルと私語をしない」――山内健太郎ディレクターに独占取材

 「林先生の初耳学」(MBS/TBS)内で2018年10月から19年3月に放送された人気企画「アンミカ先生が教えるパリコレ学」。元パリコレモデルのアンミカさんを講師として、オーディションで選ばれた9人のモデルの原石(=学院生)を指導し、半年後にパリコレに挑戦できる1人を選ぶという企画です。

 3月3日に放送された卒業式で見事パリコレ行きの切符を手にしたのは、福岡県出身の17歳・小野寺南友(おのでらみゆ)さん。アンミカ先生に加え、特別講師のコシノジュンコさん、レスリー・キーさん、冨永愛さんらによる厳しいレッスンを乗り越え、念願のパリコレのショーに出演しました。

 厳しくも愛のある指導、そしてそれに必死に応えようとする学院生の成長物語に胸を打たれる人も多いこの企画。早くも4月14日放送の「林先生の初耳学SP」から、第2シーズンがスタートします。ここでは第1シーズンから「パリコレ学」に携わる山内健太郎ディレクターに、第1シーズンの裏話や第2シーズンでの狙いなど、たっぷりとお話を伺いました。

学院生とスタッフが私語をすることは一切なかった――緊迫感の漂うロケ

「パリコレ学」が徹底していたのは「スタッフはモデルと私語をしない」――山内健太郎ディレクターに独占取材

──第1シーズンではアンミカ先生の「圧倒的な勉強不足」といった辛辣(しんらつ)な言葉だけでなく、パリコレのショーに立つモデルとしての精神的な部分の指摘も多く、張り詰めた空気が印象的でした。壮絶な場面も多かったと感じたのですが、実際にカメラを回している時間はどれくらいだったのでしょうか。

「1回のロケは4~5時間、長い時で7~8時間です。コシノジュンコさんのファッションショーの日は終日でした。学院生にとっては、時間的、体力的な部分よりも、精神的な部分の方が過酷だったのではないかと思います。現場では誰も笑わないし、スタッフと学院生が私語をすることも一切なかったんです。他のバラエティー番組だと、出演者とスタッフが関係を築いて良いものを作ろうとする雰囲気になることが多いんですけど、『パリコレ学』に関してはそうはしませんでした」

──それはなぜですか?

「アンミカさんがそうなんです。学院生に対して、先生として接するスタンスを常に崩さない。制作側としては、アンミカ先生の授業を僕たちが勝手に撮っているというイメージなんです。カメラを回す前の『3、2、1、どうぞ!』とかもしないし、カメラがずっと回っていていつ何が起こるか分からない状況で。そういう緊張感の続くロケだったと思います。僕は第1シーズンの全てのロケが終わった時に初めて学院生の皆さんに笑顔で話しかけたのですが、ある学院生から『山内さんが一番鬼だと思ってました(笑)』と言われました(笑)」

──ディレクターという立場からも、ロケの前日は緊張されていたのでしょうか。

「台本がないので、どうなるか分からないんですよね。最初のオーディションも、どういう人が受けに来るかは分かっているんですけど、それをアンミカさんがどう受け止めて、どういう返しをするかは全く予想がつかない。ファッションチェックをするレッスンの時も、その場で服を選んでもらうので、学院生がどんな服を選んで、それにアンミカさんがどういう評価をするかが分からない。想像しかできないので怖いですよね。ディレクターとしては、いろんな想定は頭の中で無数にするけど、その場で起こったことを大事にしながらロケを進行しているという感じです」

──厳しい言葉や悔しさに学院生が涙をこぼす場面はもちろん、褒められた時、一瞬だけふっと緊張感がほどける瞬間はものすごく感情移入しながら見てしまいました。

「学院生も指摘された部分を次回のロケで修正して来たりするので、前回ひどく怒られた人が今回は褒められたり。よくテレビで『予想外の結末が!』ってあおりがありますけど、『パリコレ学』に関しては本当にそうなんです。ディレクターという立場からしても、この企画を一緒にさせていただいて刺激をもらうことばかりです。最後の卒業式も、最後の最後までアンミカさんは誰にするかを決めずにロケに臨んでいたと聞きました。あの日は予定の倍くらいの長時間のロケになりました」

「OK」とカメラが止まると同時に、アンミカ先生の元へ駆け出す学院生

「パリコレ学」が徹底していたのは「スタッフはモデルと私語をしない」――山内健太郎ディレクターに独占取材

──カメラを回していない部分では、アンミカ先生と学院生はどのような雰囲気だったのでしょうか。

「ロケが終わった後、毎回すごく補講をしていました。カメラが回っている最中にも、指摘して、その後にアドバイスして、っていうところを撮っているんですけど、それだけでは聞き足りないんだと思います。アンミカさんも『ここで教えられることは全部教えたい』という思いで学院生に付き合って、カメラが回っていようが回ってなかろうが、時間いっぱいまで補講をしていますね。場所の都合があったりして『もうこれ以上は無理です!』って僕たちが言うまで続いています。その光景を見ると、アンミカさんも学院生も本気なのが伝わってきます」

──学院生に「宿題」を出すことはあったのでしょうか。

「9人それぞれ個性が違うので、アンミカさんのアドバイスも1人1人違うんです。ウォーキング一つにしても、腕を改善しないといけない子、足の運びを改善しないといけない子というように、それぞれにアドバイスをして、それぞれが改善しようと努力して次回のロケに臨んでいたんだと思います。そのような状況の中で、スタッフから9人に共通して『宿題』というものを出すことはありませんでした」

──では、「これだけはしないで」とか「これだけはしてきて」というように、スタッフから学院生にお願いしていたことはあるのでしょうか。

「それも一切ないです。先ほどスタッフと学院生が私語をすることはなかったと話したのですが、そういうことも含めて、僕たちから何かを言ったことはありません。彼女たちが人生を懸けて参加していることが分かるので、僕たちは干渉しないという考えでした」

──干渉しないという姿勢を徹底する中で、アンミカ先生と意見がぶつかることはあるのでしょうか。

「あります。アンミカさん自身も、自分のプライドやパリコレモデルとしての人生を背負って企画に参加してくださっていることが分かるんです。結果次第ではキャリアに傷がつくかもしれない、リスクを負うかもしれない。スタジオでゲストという立場で番組に出演してくださる時とは違うスイッチが入っているので、タレントとしてではなく、モデルとして覚悟を決めて企画を背負ってくださっているなとすごく感じます。なのでディレクターとしての意見と、モデルとしての意見がぶつかることはよくあって、そこは話し合いながら進めています」

「パリコレ学」的に脱落者が出るのは…「ありだと思っていました」

「パリコレ学」が徹底していたのは「スタッフはモデルと私語をしない」――山内健太郎ディレクターに独占取材

──小野寺南友さんがパリコレ挑戦への切符を手にしましたが、これは予想していましたか? それとも意外な結果でしたか?

「小野寺さんは、正直ダークホースだったと思います。前半は良くも悪くも目立たない存在で、個性が突出している印象はなかったんじゃないかなと思いますし、アンミカさん自身も意外な結果だと話されていました。写真家の萩庭桂太さんのコンポジット撮影の時、小野寺さんは全然シャッターを切ってもらえなくて後で『もう1回撮ってください』って手を挙げたんですけど、僕たちの想定していた進行を破った人はそれまでいなかったんです。僕たちの進行の流れを変えて、想定外の流れを作ったのは小野寺さんが最初で。彼女の精神的な強さが表れた瞬間だし、その後、コシノジュンコさんの評価でも1位になって、そこからどんどん伸びていったなという印象です」

──「パリコレ学」を進めていく中で、企画に不安を感じたことはありますか?

「アンミカさんとも話をしていたのですが、最終的にパリコレに行けるレベルに達する人がこの中から本当に出てくるのかという不安はありました。2期生に関しても不安があります。1期生は、小野寺さんがすごくいいゴールをしてくれたので。あと、1期生は服や用意するものと集合場所だけ知らされて、ロケ当日にその日のレッスン内容を聞かされていたんです。なので予習ができないし、その日に持っている能力が問われる。それは2期生もそうなんですけど、2期生は1期生の様子を既に見ている分、アンミカさんのハードルも上がっていると思います」

──第1シーズンではコンポジット撮影のレッスンで、世羅真弓さんが脱落してしまうのではないかという場面がありました。第1シーズンは1人も脱落者が出ることなく終了しましたが、制作側の意見としては、脱落者が出るのは「パリコレ学」的にあり得る展開なのでしょうか。

「ありだと思っていました。でもこちら側から誰かを落とすというのはなくて、辞退者が出たら受け入れる、という考えでした。でも全員どんどん成長して、レッスンごとに優劣も入れ替わって、ずっと下にいるような学院生はいませんでした。相当しんどい現場だと思いますし、それが半年間も続いて、精神的にも強いプレッシャーを感じながらやってきたと思うんですけど、それで1人も辞退者が出なかったのは本当にすごいなと思います」

──第2シーズンで変えていきたいと思っていることや、期待していることはありますか?

「アンミカさんも言っていることなのですが、授業のバリエーションをもっと増やしたいですね。前回が完璧なカリキュラムだとは思っていないし、『こんな方の授業を聞いてほしかった』というアンミカさんの思いもあるので、第2シーズンでは実現できたらいいなと思います。僕も半年間、また鬼になろうと思います(笑)」

「パリコレ学」が徹底していたのは「スタッフはモデルと私語をしない」――山内健太郎ディレクターに独占取材

 4月14日は「林先生の初耳学SP」として2時間スペシャルで放送! 「春の本気の学びスペシャル」と題し、「アンミカ先生が教えるパリコレ学」第2シーズンのほか、新企画「ギャル曽根のパティシエール学」や、古舘伊知郎さんが高学歴ニートと白熱の討論を繰り広げる企画も。

「パリコレ学」が徹底していたのは「スタッフはモデルと私語をしない」――山内健太郎ディレクターに独占取材

【プロフィール】 

山内健太郎(やまうち けんたろう) 
2004年、毎日放送入社。これまで「サタデープラス」「ちちんぷいぷい」「堂本剛のやからね」「オールザッツ漫才」「吉本陸上競技会」「痛快!明石家電視台」「ソガのプワジ」などを担当。現在は「林先生の初耳学」内の人気コーナー「アンミカ先生が教えるパリコレ学」のディレクターを務めている。

【番組情報】

「林先生の初耳学SP」
TBS系 
4月14日 午後8:57~10:48

取材・文/宮下毬菜(TBS・MBS担当)



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