Feature 特集

中川大志“畠山重忠”×小栗旬“北条義時”がこぶしで勝負! 迫力満点の一騎打ちの舞台裏とは?2022/09/18

中川大志“畠山重忠”×小栗旬“北条義時”がこぶしで勝負! 迫力満点の一騎打ちの舞台裏とは?

 第36回(9月18日放送)の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)では、北条時政(坂東彌十郎)と畠山重忠(中川大志)の対立を避けようと奔走する北条義時(小栗旬)の願いもむなしく、時政が源実朝(柿澤勇人)の下文を得て、御家人を招集してしまいました。何としても戦を食い止めたかった義時でしたが、大将として重忠と戦うことに。そして、決戦の時。義時と重忠が刀を交え、こぶしで戦う一騎打ちのシーンには、あまりの迫力に息をのんだ人も多いのではないでしょうか。

 今回はそんな重忠を演じた中川大志さんから、演じ切った今の思いや、鬼気迫る重忠と義時の一騎打ちシーンのエピソードなどを伺いました!

――重忠を演じ切っての感想をお願いします!

「大河ドラマは『江~姫たちの戦国~』(2011年)、『平清盛』(12年)、『真田丸』(16年)に次ぐ4度目で、今までで一番長く作品に携わらせていただきました。畠山重忠という役とともに過ごした時間というのは1年弱になるので、本当に終わってしまったんだという寂しさもあり、今は胸がいっぱいです。最初に重忠役のお話をいただいた時は、自分の知っている情報や印象が多くない人物だったので、どういうふうにこのキャラクターを深めていけるか未知の部分もあったんですが、知れば知るほど重忠という人物に引き込まれていきました。重忠という人物が後世に残っていて、語り継がれている意味を理解していく中で、しっかりと最後まで体現しなくてはいけないという思いで最後まで演じました」

――重忠から見て、北条一族はどういう存在だと思いますか?

「北条家の婿になり、北条の集まりにも顔を出すようになり、気付けば重忠も北条の人間になっていました。いろんな思惑がひしめいている時代ですが、そんな中でも重忠は損得感情で人と付き合わない男だと僕は思って演じてきました。自分がどこで生きて、どこで死ぬかということを考えて、孤独に向き合っていた人物だと考えていたんです。だから、頼朝(大泉洋)の死後、鎌倉の中心にいる北条が少しずつ歪んでいく姿を見てきた重忠は、きっとこの戦が起きなかったとしても、鎌倉を離れていたんじゃないかと想像しました。『もうここに自分の居場所はない。自分が信じて、命をかけて守ってきた、仕えてきた鎌倉ではなくなってしまった』という思いがあったんじゃないかと。重忠の思いは、第35回(9月11日放送)の義時と2人で酒を飲みながら会話をするシーンにすべて詰め込まれていたと思っています。いろんなことが込められたシーンで、すごく大切なシーンになりました」

――重忠と言えば、第36回のサブタイトルにもあったように「武士の鑑(かがみ)」と言われる人物ですが、実際によろいを着て、馬に乗り、武器を手にして戦うシーンはいかがでしたか?

「文武両道で知勇兼備は重忠の代名詞ともいえますし、武士のかがみといわれ、語り継がれる男です。第36回で、馬もアクションも含め戦うシーンを多く用意していただいたので、集大成の気持ちで臨みました。戦で常に先陣を任されてきた男で、みんなに『あいつは強いぞ』『あいつと戦うのは怖いことだぞ』と言われる重忠の最期の戦いは、これまでの戦とは違うという思いものせて、戦い抜きました」

中川大志“畠山重忠”×小栗旬“北条義時”がこぶしで勝負! 迫力満点の一騎打ちの舞台裏とは?

――重忠が、説得に来た和田義盛(横田栄司)に向かって「戦なぞ誰がしたいと思うか」と珍しく怒りの感情をあらわにするシーンがありましたが、どんな思いで臨んだのでしょうか?

「この戦は何が苦しいかって、やらなくていいのに、なんでこうなったんだろうとみんなが思っていることなんです。どこで間違えて、どこでこうなってしまったんだろうと、心の中で思いながらの戦なんですよ。一方で、武士として守らなきゃいけないものもあり、もう引き下がることのできないところまで来てしまったという思いもあって。重忠を1年間演じてきて、あまり感情を爆発させるところはなかったのですが、あのシーンで爆発したのかなと思っています」

――義盛が重忠を説得しに来たことについてはどう思いましたか?

「畠山にとってすごく大きな存在で、気付けばずっと横にいる毛むくじゃらのおじさん・和田義盛という男がいまして(笑)。台本を読んだ瞬間から結構グッときちゃって、こらえるのに必死でした。リハーサルで向き合っただけでも、グッとくるものがありまして…。今回の“畠山重忠の乱”は、全員古くからの友達で、幼なじみのような存在が全員敵陣に並んでいる戦なんです。そんな中、振り返ればずっと共に過ごしてきた義盛が、代表して重忠に会いに来る。そこは台本を見た時に『三谷(幸喜)さん、ずるいよ』と思うほどでした。また、本当にありがたいことに、重忠と義盛は視聴者の方からすごく愛してもらえて。勝手に重忠をライバル視している義盛と、あまり相手にしてない重忠という両極端な2人は、第1回から一緒にいて、いつもやり合っている2人がすごく愛らしく、かわいらしいやりとりが僕も好きでした。きっと、三谷さんもその思いを受け止めてくださって、最後はああいうシーンになったのかなと勝手に想像しています。そんな2人が挑む戦の何が悲しいって、重忠が誰よりも義盛のことを分かっていることがすごく悲しいですよね。義盛の考えていることを全部先回りできるくらいずっと一緒に戦って過ごしてきた仲間なので、そこはすごく苦しくもありました」

中川大志“畠山重忠”×小栗旬“北条義時”がこぶしで勝負! 迫力満点の一騎打ちの舞台裏とは?

――重忠と義時が殴り合うことになった経緯と、実際どのように演じたのかを教えてください。

「実は台本のト書きには、“重忠と義時の一騎打ち”としか書かれていなかったんですが、小栗さんから『一騎打ちは奇麗な立ち回りではなく、ものすごく泥くさいものにしたい』という話をされたんです。その際、『まさしく、僕も同じ意見です』と言ったことを覚えています。重忠と義時は10代の時からの共に過ごした幼なじみで、最初は敵方にいた時もありましたが、重忠が頼朝の下に付いてからは、ともにいくつもの戦も乗り越えてきました。旧知の仲の2人が最後、子どものように子どものけんかみたいに、最後思いっきり泥くさく戦えたらいいよねと。『俺は畠山重忠という男に思いっきりここでぶん殴られたいんだよね』と小栗さんから言われてから、監督、アクションチーム、小栗さんと一緒にリハーサルを重ねて、いろいろなパターンや動きを相談して作っていきました。あの時代に素手で殴り合うことはあまりないんですが、重忠の生き方や信念、この戦をする意味を一発一発に込められたらいいなと。僕もとても納得のいく最後で、あの戦の意味が、こぶしでの殴り合いに凝縮できたと思っています」

――見応えのあるシーンでした。あの一連の殴り合いのシーンは、どれくらいの時間がかかっているのでしょうか。

「“畠山重忠の乱”はかなり久々に大がかりなロケーションで、撮影には計3日間かかりました。ありがたいことに、僕は戦のシーンでクランクアップを迎えたんです。一騎打ちのシーンは、3日間の最後の最後の撮影だったんですが、本当に満身創痍(そうい)という感じで。この夏の暑さの中、スタッフの皆さんもまさに“戦”だったと思います。死闘だったと言っても大げさじゃない撮影でした。その3日間の最後に、小栗さんも僕も体力的にもかなりボロボロの状態で、トータル何分間殴り合っていたのか記憶にないです。体感としては、あっという間で、1分、2分の話だと思っていましたが、おそらく10分以上は2人で殴り合っていた状態だったと記憶しています。歴代の大河ドラマで、あそこまで着物とよろいが破壊されたシーンは、今までなかったんじゃないかというくらい、着物はビリビリ、よろいも至るところが破損して、原形をとどめていない状態でのシーンになりました」

中川大志“畠山重忠”×小栗旬“北条義時”がこぶしで勝負! 迫力満点の一騎打ちの舞台裏とは?

――こぶしで殴り合った後、重忠は義時に刀を振り下ろすも、とどめを刺しませんでした。その時の重忠はどんな胸中だったと思われますか?

「この時代はいろんな人が亡くなり、殺され、北条家も義時もいろんなことがあって、人々を葬り去ってきました。そんな義時に対して、殺されること、死ぬことがどういうことなのかを重忠が本気でぶつけて示したシーンだったと思っています。とどめを刺さなかったのは、義時の苦しんでいる姿や板挟みになって駆け回っている姿、陰でさまざまな人たちをつないで調整してきた姿などを一番近くで見てきて、この先、鎌倉をどうにかできるのは義時しかいないことを重忠が一番よく分かっていたからだと思います。僕は重忠が義時を常に見ていることを意識してやってきた1年間でもありました」

――殴り合うシーンを提案された小栗さんはどんな存在でしたか?

「小栗さんは大好きな兄貴、お兄ちゃんのような感じです。この作品に関わっているスタッフ、出演者はみんな口をそろえて、そう言うと思います。小栗さんの周りには人が集まってきて、義時のように人と人をつなぐ力があって、あらためてすごいと思う先輩。収録を1年以上しているので、2人で馬の稽古に行ったことも、一緒に食事に行ったこともありました。小栗さんは『鎌倉殿の13人』という作品が誰よりも一番好きだし、関わっているチームみんなのことも大好きだと思います。それくらい、常にささげている印象です。僕たち後輩のことも引っ張ってくれて、かわいがってくれる優しい方です」

中川大志“畠山重忠”×小栗旬“北条義時”がこぶしで勝負! 迫力満点の一騎打ちの舞台裏とは?

――最後に、今回の大河ドラマの出演で得たものを教えてください。

「初めて大河ドラマのスタジオに入らせてもらったのが、小学校6年生の時。何も分からず、お芝居も始めたばかりの頃に初めて行った大河ドラマの現場は、ものすごい緊張感がありました。周りを見ても先輩やベテランの方しかいなくて、ほかでは味わえない特別な空気感が今でも体に染みついて残っています。それから何年たっても、大河ドラマのスタジオに戻ると、すごく背筋が伸びて怖いんですよ。あそこに立つのはとても勇気がいるというか…。その中でも負けずに飲み込まれずに戦い抜くことが、今回の自分の中の目標でテーマだったのですが、その時に“重忠”という男が毎回自分を奮い立たせてくれたと思っています」

――ありがとうございました!

【番組情報】

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム・NHK BS4K
日曜 午後6:00~6:45

NHK担当/K・H



この記事をシェアする


Copyright © TV Guide. All rights reserved.