原田美枝子が「アッラ・フォンターナ」のオーナー・房子を演じる上でこだわった部分とは?2022/08/17
第18週(8月6日~12日放送)の連続テレビ小説「ちむどんどん」(NHK総合ほか)では、比嘉暢子(黒島結菜)が勤める西洋料理店「アッラ・フォンターナ」で暢子と青柳和彦(宮沢氷魚)の結婚式が行われました。その際、長年、会うことがなかった「フォンターナ」のオーナー・大城房子(原田美枝子)と沖縄県人会会長の平良三郎(片岡鶴太郎)の対面も実現。さらには、歌子(上白石萌歌)にだまされた砂川智(前田公輝)も列席するなど、にぎやかな披露宴が開催されました。その席で「沖縄料理の店を開く」と宣言し、独立に向けて動き出した暢子。これからどうなっていくのかが気になるところです。
今回は、房子を演じる原田さんから、房子の人物像や結婚式でようやく再会を果たした三郎への思いなどを伺いました!
――まずは、房子を演じることになった時の思いを教えてください。
「この年齢になると、優しいお母さんやおばあちゃんというみんなを見守る役が多くなってくるんです。それもすてきな役なのですが、長く生きてくるともっといろんなことがあって、いろんなことを感じるんだよねと思うところがあったんです。そんな時に房子の役をいただいて。房子のセリフには、大変なことやうれしいこと、若い人へ伝えたい思いなどが所々で出てきて、そこに自分の思いを乗せて伝えることができました。とても良いセリフが随所にあって、それを言えたことは良かったです」
――朝ドラは「水色の時」(1975年)以来ですが、あらためて朝ドラに参加して感じたことを教えてください。
「びっくりするくらいたくさんの方が『毎日見ていますよ』と言ってくださるんです。普段ドラマを見ないような友人からも『ビデオにとって見ているよ。いい役だね』と言ってもらえて。影響力の大きいドラマだなと思いました。47年前に出演した時は、レギュラーというよりは、主人公の大竹しのぶさんの兄弟の友達だったので、ちょっとしか出ていないんです。だから、あまり自覚がなかったのですが、今回は本当に日本中でたくさんの方が朝ドラを見ているんだと感じました」
――レストランのオーナーで、雰囲気やたたずまいが格好いい房子ですが、演じるにあたり心掛けたことありますか?
「格好よくありたいという思いは常にありました。房子は屋台から始めて、ちょっとずつ努力して『フォンターナ』に行き着いた人。今は女性が働くことが当たり前の時代ですが、当時は女の人が働くこと自体が大変だったと思うんです。しかも結婚をしないで、仕事だけやっていくことに対しても風当たりが強かったはず。そんな中、昭和を生き抜き、あれだけ大きなお店を銀座に構えて、一流の店にして、いろんな人々を迎え入れている房子さんは相当のやり手だなと。普通はうまくいかなくて、愚痴をこぼしたりすることもあると思いますが、房子は言い訳をしないで、前へ前へと進んでやってきたすごい人というイメージで演じています」
――そんな房子を演じていて、ご自身との共通点を感じることはありますか?
「どちらかというと、房子と同じように男っぽい性格かもしれません。ぐちぐちと小言を言わないところは似ているかもしれませんね」
――演じる上でこだわったところがあれば教えてください。
「役作りでうまくいったことの一つに着物を着たということがあります。演出サイドの提案で、房子はイタリア修業に行った際、日本について知らなかったことに気付き、帰国後、日本の文化を大事にしようと着物を着ることを決意したという設定にしたんです。着物といっても旅館のおかみのような雰囲気とは違い、羽織を着ることによって、男性がジャケットを着ている時のような雰囲気にして。それがいい効果を出してくれました」
――とてもすてきな着物姿ですよね。また、店で料理を作るシーンもありましたが、撮影はいかがでしたか?
「普段、料理をしているんですが、フライパンを返すのがなかなかうまくいかなかったです。しかも、いつも使っているものよりも1.5倍くらい長い包丁で切っていくので、結構難しくて。でも、協力してくださっている料理指導のスタッフの方々が本当に親切に教えてくださいました。完成した作品を見たら、料理がすごくうまい人になっていたので、うれしかったです(笑)」
――オーナーとしてだけでなく、料理の腕も一流の房子は暢子にとって憧れの存在ですが、房子にとって暢子はどういう存在だと思われますか?
「親戚だと分かったことも大きいですが、暢子を戦争で亡くなった自分の妹と重ねているところもあるし、房子自身はそういう思いを絶対外には出さないけど、娘のような気持ちもあって。房子はそういう愛情を抑えながら暢子に接している気がします」
――そんな暢子を演じる黒島さんとの共演で印象深いシーンを教えてください。
「撮影自体もですが、主人公の長い人生を見せていかなければいけないことも大変だなと。先日、とても大事なシーンの時に俳優として黒島さんにアドバイスをしたら、黒島さんがくみ取ってくれて、次の本番でものすごく良くなったんです。私と黒島さんの関係がまさに房子と暢子の関係のようで、役と自分たちがリンクしたような気がしました」
――黒島さんのどんなところに魅力を感じましたか?
「真っすぐなところです。撮影が大変で、彼女はセリフ量も膨大で朝から晩まで出ずっぱりなので、雑談をする暇がなく、あまりお話はしていないんですが、シャイな人だけど、真っすぐ物事に向かっていくという印象で、内面にすごく強いものを秘めているんじゃないかと思っています。また、結婚式の時の琉装姿がとてもかわいかったんです。ウエディングドレスもかわいかったですが、琉装のたたずまいは『さすが、沖縄の子だわ』と。これから彼女がどんなふうに生きていくのかを、きっと房子のような気持ちで見ていくと思うんです。まだ25歳でこれからですから、すごく楽しみですし、お母さんのような気持ちで見続けると思います」
――最初の頃の房子は怖くて厳しいイメージでしたが、徐々に柔らかい雰囲気になっていきました。初めから意識して演技されていたのでしょうか?
「変化の出し方を考えながら芝居していたわけではなく、台本に書かれていることを一つ一つ演じていったらああいう形になりました。房子の性格は一線を保つようなところがあって、暢子が自分の娘のようだと口に出して言ってしまうと、それまで張っていた気が崩れてしまうのではないかと考えています。内心では自分が生きてきた道を振り返るように暢子のことを見ているだろうし、これから先のいろんな大変なことを想像しながらも、励ましたり、厳しいことを言ったりしながら見守っていくと思います」
――また、房子といえば三郎との過去があり、三郎と房子は似た者同士という印象を受けました。
「三郎と房子がそれぞれ違うことをしているんだけど、同じようなことをしているというのがカットバックで交互に映し出されるなかなかいいシーンがあるんですが、そういうところを見ると、似ている2人なのかもしれませんね」
――そんな2人が第17週(8月1日~5日放送)で対面はしなかったけれど、扉越しでお互いの存在を認識していました。あのシーンでは、房子の意外な一面を見ることができましたが、どんな思いで演じたのでしょうか?
「何年も直接会っていない三郎と、暢子を通して関わることになった房子は、三郎に会いたいけど会いたくない、会いたいけど見られたくない、という複雑な気持ちがあって。年をとった自分を見られたくない女心が出るように意識して演じました。撮影ではお会いしないので、ドラマで三郎を見ているのですが、演じる鶴太郎さんが格好いいんですよね。着流しで出てきて、鶴見で潔く生きている感じがすてきです」
――そして、第18週の暢子の結婚式で、ついに2人が再会しましたね。
「暢子が結婚式を『フォンターナ』でやることになって、そこに三郎絡みの話が出てくるのですが、ストーリーと『フォンターナ』という店がうまくかみ合ったシーンになりました。プロデューサーに、『最初から結婚式をフォンターナでやると決めていたんですか』と聞いたところ、途中から『フォンターナ』で結婚式をする形に決めて物語を作っていったそうです。私は『フォンターナ』が本当に好きで。セットもディテールが一つ一つきちんと作ってあるので、どこを切り取っても絵になるんです。アンティークのものなどが置いてあって、本当にしゃれていて。私たちが何カ月かその中で動くことによって、『フォンターナ』という店が実在するかのように生き生きしていたので、セットがなくなる時は本当に寂しかったです」
――さらに房子のことを思い続ける二ツ橋光二も気になる存在です。二ツ橋を演じる髙嶋政伸さんの印象を教えてください。
「髙嶋さんとは『新・腕におぼえあり』(1998年/同局)という作品で義理のきょうだいとして共演したことがあります。その時に2人で剣術の試合をするシーンがあったんですが、私はどうしても3手しか覚えられなくて。髙嶋さんは結構大変な殺陣を受けてくださって、何回か打っちゃったので『大丈夫ですか』と聞いたら『はい、男の子ですから』と言って我慢してくれた思い出があります(笑)。私は放送で二ツ橋のシーンを見ているんですが、すごく楽しいです。暢子に聞かせる“後輩と先輩”、“先輩と後輩”の話を聞いていると、とてもいい人で本当に房子のことが好きで大事に思っているんだなと感じて、『本当にありがとうございます』という気持ちになります」
――あらためて、房子についてはどう思っていますか?
「プロの料理人として、屋台から頑張って店を築き上げてきたことに一番の誇りや自信がある人だと思います。そして、暢子にも自分の店で働いていた人たちに対しても、料理人としてこうあってほしいという思いを伝えている。今後、『フォンターナ』を出て行った矢作知洋(井之脇海)と房子のいいシーンがあるんです。人情があるシーンで『格好いいな、この人』とつくづく思いました。厳しいだけじゃなくて、懐も深くて。そこがすてきだなと思いながら演じていました」
――今後、暢子が独立することになりますが、房子はどんな心境だと思われますか?
「房子は『あなたはどう思うの』と聞いて、その答えに対して、ちゃんとフォローするんです。自分の考え方を全部通すのではなく、相手が自分自身で考えたことを尊重して、受け止める懐の深い人。でもきっと内心は『フォンターナ』を継いでほしいんでしょうね。今後、寂しいのに本当のことを言わないで、反対の態度をとるシーンがあるので、そんな房子も見てほしいです」
――ありがとうございました!
第19週あらすじ(8月15日~19日放送)
披露宴で「沖縄料理の店を開く」と宣言し、みんなを驚かせた暢子だが、房子も重子(鈴木保奈美)もどうやら応援してくれる様子。暢子が独立に向けて動き始めた頃、賢秀(竜星涼)にも何やら動きが…。一方、沖縄では、給食主任を任された良子(川口春奈)が、子どもたちの野菜嫌いをなくそうと奮闘し…。
【番組情報】
連続テレビ小説「ちむどんどん」
NHK総合 月曜~土曜 午前8:00~8:15ほか ※土曜は一週間の振り返り。
NHK BSプレミアム・BS4K 月曜~金曜 午前7:30~7:45
NHK担当 K・H
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