「漫勉neo」に新井英樹が登場。「運動会の競争でビリを行く子どもに拍手を送るような気持ちで見てもらえたら」2022/03/13
日本を代表する漫画家・浦沢直樹氏が、漫画家たちの創作の秘密に迫る、NHK Eテレで不定期放送中の異色ドキュメンタリー「浦沢直樹の漫勉neo」(午後10:00)。3月16日の放送に登場する、青年漫画「パンゲアね」(読み切り作品)の作者・新井英樹氏からコメントが到着した。
同番組は、普段は担当編集者ですら立ち入ることができない漫画家たちの仕事場にカメラが密着し、漫画誕生の瞬間をドキュメント。「YAWARA!」「MONSTER」「20世紀少年」など、数々のヒット作を手掛けてきた浦沢氏が、その貴重な映像を基に、同じ漫画家の視点から対談で切り込んでいく人気シリーズだ。今回は、3月2日に少年漫画「弱虫ペダル」を手掛ける渡辺航氏、9日に少女漫画「ケルン市警オド」の青池保子氏が出演している。
浦沢氏いわく「制作の裏側を見せることに抵抗がある漫画家が多い」という密着取材だが、今回取材を引き受けた新井氏は、「『いつもの作業風景』の撮影が『いつもより集中した作業』になり、『いつもより速度の上がったペン入れ』となったものの、それでも『漫勉史上最も遅いペン入れ』とのことに衝撃を受けました(笑)」と感想を伝える。
浦沢氏との対談については「『あの』対談場所を受け入れてもらえた懐の深さ、『漫勉』という番組のコンセプトを否定するかのような『俺、絵の作業でお見せできる、語れることなんかないですけど…』に気遣ってくれた浦沢さんの惻隠(そくいん)の情にも感謝してます!…って大丈夫なんですかね? 番組。ありがとうございました」と感謝を述べつつ、対談時には、自身の執筆映像を「恥ずかしくてほぼ見てませんでした(笑)」と告白し、「そうしたら浦沢さんが『新井さん、ちょっと漫画作業の話をしてもいいですか?』と。申し訳ない気持ちでいっぱいになりました」と振り返る。
そして、視聴者や読者に向け、「運動会の競争でビリを行く子どもに拍手を送るような気持ちで見てもらえたら…と、切に願います」と訴える新井氏だが、「浦沢さんはじめ、漫勉に登場する漫画家さんたちの漫画への情熱に自分が対抗できるものは何か? 絵を入れれば落ち込むし、常に下手クソってコンプレックスと戦うばかりだし…。その結果、超絶飽き性・面倒臭がりの俺が、それでも30年以上こんな面倒な作業を仕事として続けられているのは『重症の病気』なんじゃないかという結論。それでもごくたまに、年に一度か二度くらい『お! これ、いいじゃん!』って瞬間があって。あ〜、それがあるからやめられないのか…ってゆるく、割と強い自分が納得するご褒美がほしい『病気』! その程度でも楽しくほどほど満足して生きていけると思います、はい!」と漫画に対する思いと、前向きになれるメッセージを寄せている。
なお、3月9日放送分の青池氏出演回が、NHK+(https://plus.nhk.jp/)とNHKオンデマンド(https://www.nhk-ondemand.jp/#/0/)で配信中。
取材を振り返り、青池氏は「モノクロ原稿で3日間、カラー原稿で2日間。4Kカメラに一部始終監視されてサボるわけにもいかず、ひたすら原稿描きに集中していたら、なんといつもより仕事がはかどって、早めに原稿が上がって大喜び。でも終わった後の反動がどっと来てグダグダに。やはり結構緊張していたんですね」と裏話を明かし、「取材期間中、隣室で忍者のように息を潜めてモニターに貼り付いていた3名のスタッフの方々も、どうもお疲れさまでした」とスタッフへねぎらいの言葉をかける。
続けて、「対談では、浦沢さんの鋭い分析力に、目から鱗(うろこ)が何枚もはがれ落ちました。何十年間もただ心の趣くままに描いてきた作品群について、きちんと系統立てて解説されて、自分でもすごく腑(ふ)に落ちることがありました。同業者だから理解できる、創作のキモの部分ですね。たくさんの発見があって、とても楽しかったです」と感想を話し、「今までにほかの先生方の執筆映像を見ながら、そこはこうした方がとか僭越(せんえつ)にも思ったりしたこともありますが、いざ自分の映像を見るとなると…。10回も描き直すって何? ただの下手くそにしか思えないじゃん!と自分ツッコミ。客観的に自分の作業を見ることができて、あきれたり反省したり。描き方を見直すいい勉強になりました」と自身の作業へも影響があったことを打ち明ける。
そして、「『漫勉』は一般の視聴者にもプロの漫画家にも勉強になる番組ですね。とても手間をかけて丁寧に作られた番組なので、長く続いていただきたいです。これからも楽しみにしています」と番組へエールを寄せた。
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