2.5次元作品で活躍する俳優・糸川耀士郎、所属劇団で脚本・演出・主演の“3刀流公演”開幕!2022/03/02
ソニー・ミュージックエンタテインメントが運営する演劇集団「劇団番町ボーイズ☆」が、3年ぶりとなる本公演を開催。本作は、メンバーの糸川耀士郎さんが初めて脚本・演出・主演の3役を務めることでも注目を集めています。
2.5次元作品を中心に豊富な舞台経験を持ち、ミュージカル「刀剣乱舞」など話題作への出演が続く糸川さんだけに、どのような世界観を創り上げるのか、期待度も上がります。脚本制作の際に苦戦したことや、演出に対する心意気、作品に込めたメッセージなど、糸川さんにたっぷりと伺いました。
── 劇団番町ボーイズ☆第14回本公演「逃げろ、逃げるな。」では、糸川さんが脚本・演出・主演を務められます。最初にこの3役を任せられた時のお気持ちは?
「脚本は、以前からちょこちょこ書いていたんです。そうしたら、今度は自分で書いた脚本を自分で演出してみたいという気持ちが芽生えてきたんですね。僕は芝居が大好きで、面白い作品を自分で作りたいという気持ちが強いので、ようやくこういう機会をいただけたことがホントにうれしくて! 不安もなかったわけではないですが、ワクワクの方が大きかったですね」
── 今回、脚本はどのように作っていったのですか?
「最初に、どういうテーマで書いていくかを決めました。でも、そこに込めたメッセージがほかの演出家さんでも伝えられるものだったら、僕が演出をする意味がないと思ったので。演出家としては経験も実績もほとんどない、20代の今の僕だからこそ伝えられるテーマは何だろうか。それを考えるところから始めました」
── 最終的に行き着いたテーマとは?
「最近、SNSでの中傷やイジメなどが原因で、追いつめられて命を落とす方のニュースなどを目にすることが増えたような気がして。そういう人たちの救いになるようなメッセージをテーマにしました」
── そこから、脚本作りはスムーズに進んだのですか?
「それが、そうでもなくて…。テーマは決まっても、それを演劇として見せるとなると、ストーリーを作るのがすごく難しいんですよ。約2時間の尺の中に、1、2カ所は大きな驚きポイントがないと、お客さんを飽きさせてしまうと思うんです。“わっ、こんな展開が!?”“あそこの伏線は、こうやって回収されるんだ!”というふうに、ドキドキさせる本を書くのって、めっちゃ難しくて。今回、ほさかようさんに脚本・演出監修で入っていただいたのですが、最初に書いた50ページぐらいの脚本を読んでもらって、ほさかさんに相談しました。その際に『ここの展開、甘くない?』とか『ここって矛盾してない?』など指摘された部分を直そうとすると、1カ所だけを改善しても修復できなんですよね。結局、設定から見直したり、何回も書き直していたら、最初のプロットと全く違うお話になりました(笑)」
── なるほど(笑)。ストーリーとしては、どういった方向性なのでしょうか?
「僕が演じる主人公・吉澤アキラが、社会になじめなくて孤立している広野隆弘(堂本翔平)と出会うところから、物語は始まります。広野は、現実ではうまくしゃべることができないキャラクターなので、アキラとはインターネットを通じて仲よくなっていくんですね。その過程で事件が起きて、それぞれが己と向き合うことになるという。アキラは小説を書いているのですが、それはなぜか、とか、すべての設定に意味があるんです。登場人物全員にドラマがある群像劇であり、最後には点と点がつながって、すっきりするようなミステリー要素も入った、ジャンルのハイブリッドみたいな作品になっています」
── タイトルも意味深ですが、どの段階で「逃げろ、逃げるな。」に決めたのですか?
「最初にほさかさんに、“僕はこういう舞台を作りたくて、こういうメッセージを伝えたいんです”と相談をした際に、アドバイスをいただきながらディスカッションをしたんですね。その最中にパッと思い浮かんだのが、このタイトルだったんです。僕が『絶対にこのタイトルでいきたい!』とゴリ押しして決まりました(笑)」
── ご自身のひらめきを信じたわけですね。今振り返ると、脚本を書いていく中で大変だったなと感じることは?
「“あっ、こういうお話、面白そうだな”って自分の頭の中に思い描いているものを、言葉や会話にするのに苦労しました。僕は脚本を書くのは初心者なので、きちんと画的にやっていった方がいいと思って。『起承転結の“起”が何ページ、“承”が何ページ』みたいに細かく設定して、パズルをはめ込むように書いていきました。でも、途中で“やっぱり、こういう結末になったら面白いんじゃないか”って新しいアイデアが浮かんだりするんですよ。じゃあ、結末のつじつまを合わせるために中盤のお話をどうしよう、とか。“このキャラクターがこういう設定だったら面白いな”と思いついたら、その設定をどうやって散りばめよう、とか。そういう作業がめっちゃ難しかったです。“ここの照明はこうしたいな”“ここでかかる曲は、こういうのがいいな”といった演出のイメージは、脚本を書いていると自然に湧いてきましたね」
── 糸川さんの書かれた脚本については、劇団の皆さんどのような反応を?
「それが…脚本を書き終えた時、自分の中で結構手応えがあったんですよ。でも、マネジャーさんに見せたら、思ったよりリアクションが薄くて(苦笑)。キャストのメンバーも、ニシケン(西原健太)からは『耀士郎くんらしい、真っすぐな台本ですごくよかった』ってLINEが来ましたけど、それ以外のメンバーからは感想が送られてこなかったので、すっごく不安になりました。でも、ほさかさんは(脚本を)褒めてくれたんですよ! 今、それだけが救いです(笑)」
── ご自身のInstagramで「新人らしからぬ舞台を創ります」とコメントされていましたが、どんな演出になりそうですか?
「ありがたいことに、今までに僕は多くの素晴らしい演出家さんと出会うことができました。そのおかげで、役者として芝居をしていても、“わっ、この演出しびれるな~”と感じる瞬間があったりとか。“(セットの)テーブルに無造作に置かれたコップに、そんな意味があったのか!”って、おしゃれな小ネタが挟まれていることに気付いたりとか。自然と演出家視点で作品を見るようになって、無意識に演出というものを吸収していたんでしょうね。なので、最初はいろいろと悩むんだろうなと思っていたのですが、台本を書いてみたら、演出に関してもパッとイメージできたんですよ。とはいえ、まだ怖いんですけどね。僕がイメージできるものは、ありきたりなアイデアなんじゃないかとか、不安で…。まぁでも、そこは1回自分を信じてやってみようと思っています。キャストに対しては自分のイメージが明確にあるので、割と要求スタイルの演出になりそうですね」
── ご自身も役者であるからこそ、キャストへの要求も高くなりそうですね。
「お芝居に関しては、僕の求めているところまでは絶対にいってほしいという気持ちが強いので、要求レベルは結構高くなってしまう気がします。ただ、僕自身も役者なので、どんな演出をされたら役者のモチベーションが上がるかとか、逆に困るかとか、そういうことが分かるんですよ。なので、みんなのモチベーションを保ったまま、だけど、“あっ、僕はここがまだまだ甘いわ”って自ら気付けるような演出を心掛けたいとは思っています。本人たちには言わないですけど(笑)」
── そこは、役者が演出を手掛けるところの強みですよね。さらに今回は、座長も務められます。
「今のところ、一番不安なのがそこなんですよね。脚本と演出だけだったら、割とイメージができるんですよ。“みんなをこうやって誘導して、こういうお芝居を作ろう”とかって。でもそこに、自分が役者として出る…しかも、すごく大事な役で、セリフ量も膨大になってしまったので、(脚本・演出と役者の)両立はめっちゃ大変そうですよね。なので、当面は演出だけに集中させてもらおうかなと。僕が普段、役者として稽古に参加する時は、演出家さんのイメージになるべく近づけよう、作品の世界観になるべく近づけようとしつつ、役者としての力も出す、みたいなアプローチの仕方をするんですけど。今回は、すでに作品へのイメージはできているので。ある程度、演出が形になったら自分のセリフを深く…会話劇みたいな構成なので、セリフのテンポとかそういうところをキチンとやっていこうかなと思っています。
── 本公演としては3年ぶりということで、劇団の皆さんにもアツい思いがあるのでは?
「そうだったらいいなぁ。僕としては、初めての脚本・演出が大好きな劇団メンバーの作品でできるのが、ホントにうれしいんです。僕は欲張りなので、自分がやるからには作品も面白くしたいし、キャストのみんなのよさも一番引き出してあげたい。なので、当て書きまではいかないですが、みんなの芝居が生きる配役にしました。なかには、“今まで、あいつのこういう姿を見たことがないから、頑張ってほしい”というチャレンジ枠のメンバーもいるんですけど。メンバーそれぞれの色が存分に出るキャラクターを作ったつもりなので、全力でぶつかってきてほしいですね。それに、これだけ恥をかいてもいい場ってなかなかないと思うんですよ。外部の舞台出演の時などは、どうしても役者同士、プライドのぶつかり合いみたいなところもありますから。今回は劇団の公演で身内しかいないので、どんどん恥ずかしい姿を見せて、いっぱい挫折をして、役者として一回りも二回りも大きくなってほしいですね」
── あらためて、本作を楽しみにされている方へ、メッセージをお願いします!
「糸川耀士郎初の演出・脚本というところも、もちろん楽しみにしてほしいんですけど。見てくださった方に、僕の伝えたいメッセージがちゃんと届いて、1人でもいいので心が救われたと感じてくれる方がいたらうれしいです。僕らにしか表現できないアツい作品を創りたいと思っていますので、ぜひ期待していてください!」
【プロフィール】
糸川耀士郎(いとかわ ようじろう)
1993年5月28日生まれ。島根県出身。A型。主な出演作は舞台「黒子のバスケ」(赤司征十郎役)、舞台「憂国のモリアーティ」(ルイス・ジェームズ・モリアーティ役)、ミュージカル「刀剣乱舞」(浦島虎徹役)、「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」(神奈備衢役)など。「糸川耀士郎1st写真集『眩耀』」(東京ニュース通信社)が好評発売中。声優として出演するテレビアニメ「群青のファンファーレ」(京力秋樹役)は、TOKYO MXほかで今春放送予定。
【作品情報】
劇団番町ボーイズ☆第14回本公演「逃げろ、逃げるな。」
日程:3月9~13日
会場:東京・CBGKシブゲキ!!
脚本・演出:糸川耀士郎
出演:糸川耀士郎/木原瑠生 西原健太 坪倉康晴 宮内伊織/堂本翔平
<日替わりゲスト>
3月10日 午後6:00 回…菊池修司
3月11日 午後1:00 回…矢代卓也
3月12日 午後1:00/午後5:00 回…織部典成
【3月13日千秋楽公演ライブ配信決定】
日時:2021年3月13日 午後4:00開演
▼視聴料金
【FC会員(番ボ☆CHAN)】3,300円(税込)
【一般】3,800円(税込)
▼配信視聴チケット
販売期間:3月1日午後7:00~3月20日午後9:00
視聴終了時間:3月20日午後11:59
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取材・文/林桃 ヘア&メーク/望月光
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