藤原さくら「凛は、“花枝のことが好きな慎吾”が好きだったりするのかなって…」――「ファイトソング」インタビュー2022/02/18
いよいよ物語が後半に突入した火曜ドラマ「ファイトソング」(TBS系)。2021年にNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」でヒロインを務めた清原果耶さんが主演を務め、空手の日本代表を目指す主人公・木皿花枝を演じています。花枝は児童養護施設で育ち、持ち前の明るさとスポーツ根性であらゆる逆境を跳ね飛ばしていくポジティブな役どころ。そんな花枝が、ひょんな事から出会ったミュージシャンの芦田春樹(間宮祥太朗)と、幼なじみの夏川慎吾(菊池風磨)との三角関係の恋を繰り広げていきます。
脚本は、連続ドラマ「この世界の片隅に」(同系)や映画「いま、会いにゆきます」など数々の名作を世に送り出し、19年に紫綬褒章を受章した岡田惠和さん。さまざまなラブストーリーを届けている火曜ドラマ枠で、岡田さんが不器用な3人の若者たちによる、じれったくて切ない恋と成長の物語を紡いでいます。
そして、花枝と芦田の恋の“取り組み”の傍ら、慎吾に対して切ない片思いを繰り広げているのが藤原さくらさん演じる萩原凛。花枝の気持ちも慎吾の思いもさりげなく気遣う様子に「できる女すぎる!」などの反響が飛び交っています。今回は、親友と片思い相手への恋心を絶妙なバランスで見事に演じる藤原さんにインタビュー。役作りや現場の様子、藤原さんだからこそ分かる凛のある気持ちを明かしてくれました。
――毎週、凛の絶妙な切ない表情やセリフに悶絶しながら作品を拝見しています。ご自身から見た凛の印象や、台本からくみ取っていることがあれば教えてください。
「好きな人が親友に恋していたら誰でもしんどいんですよね。小さい頃からいちずに慎吾を思っている部分や意志の強い性格の持ち主ということは、台本の一つ一つのセリフから感じます。真っすぐだけど、ストレートには言えない部分があって、男の子っぽいところと女の子っぽいところが混在しているキャラクターなので、とてもいとおしい存在だなと思って演じています」
――凛との共通点はありますか?
「『バーバーサッコ』で、仕事道具を適当に置いて迫さん(迫智也=戸次重幸)に後で直されるシーンだったり、何かにぶつかって『痛たっ!』って声を上げてしまうところだったり、少し雑な部分が似ているかなと思います。凛は今どきの女の子に近いのかもしれません」
――等身大で親しみやすいキャラクターだからこそ、凛への反響はSNSでも大きいですよね。藤原さんにはどんな反響が届いていますか?
「ドラマを見ている家族や友人からも『かわいそう! 切ない!』って連絡が来たり、『最後は報われるの?』って聞かれたりもするんですけど、私もこれからどうなっていくのか分からないんです。スタッフさんにそれとなく聞いてみても、まだ教えてくれなくて(笑)。でも、どうなるんだろうって思っている方がお芝居もリアルになっていいのかなと思っています。やはりコメントをもらう度にすごく反響のある役だなと実感しますね」
――役作りで特に意識した部分は何でしょうか?
「髪を染めたことが一番大きかったです。衣装合わせの時に、凛の性格や育ち方を教えていただいたのですが、『凛は思うようにいかないことがあって、どうしていいか分からなくなった瞬間に開眼してヤンキーになります!』って言われたんです。そこから衣装を選んで行く中で髪形を相談したり、インナーカラーを入れたりするのはどうだろうってリクエストをいただきました」
――インナーカラーすごくお似合いですし、藤原さんのイメージもかなり変わりました! 最初に「ヤンキーになります」って言われた時はどう思いましたか?
「ありがとうございます! 凛は慎吾に対しての言葉もかなり語気が強めで。『うっせーな!』とか、男勝りな言葉遣いをするキャラクターではありますが、言葉の裏側にある愛情を感じるいとおしいキャラクターでもあります」
――蹴ったりするシーンもありますしね(笑)。
「そうなんです。普段人を蹴ることなんてないので、どれぐらいの強さで蹴ればいいのか分からなくて、こんなに蹴ってしまって痛くないか確認していました(笑)。リハーサルの時から試行錯誤していたら、監督やスタッフさんから『もっと強気で蹴って! そんなもんじゃないから!』って言われたので、結構強めに蹴りました」
――本番では渾身(こんしん)の一発を入れているんですね! ちなみにその一発を受けて、菊池さんはどんな反応を…?
「菊池さんは本当に痛そうに見えるリアクションをしてくれるのでやりやすいです(笑)。本当に痛かったらすみません」
――そうだったんですね! 菊池さんといえば、アドリブがとても多いというエピソードが制作発表会見の時に話題になりましたが、いかがですか?
「(かみ締めるようにうなずきながら)多いです。多い…(笑)」
――(笑)。藤原さんは特に共演シーンがたくさんありますよね。アドリブを受ける側としていかがでしょうか?
「自分でメロディーを創作して歌ってるシーンが多くて。この前も、その歌が面白すぎて笑いのツボにハマって撮影が進まなくなっちゃって大変でした! 笑わせてやろうって思って演じている部分もあるんじゃないかなと思うくらい」
――楽しそうな現場ですが、笑いをこらえるのは苦行ですね…。ちなみにその爆笑が続いたシーンはどんな場面だったのでしょうか?
「『バーバーサッコ』で、慎吾がキャバクラへ行っていることにみんなで驚いたら、慎吾が『いい国つくろうキャバクラ幕府』って歌いながら去っていくというシーンがあって。踊りのキレも最初のカットからどんどん過激になっていって『今の笑いは菊池さんのせいだから許してください!』って言いたくなるくらい大変でした」
――本当に和気あいあいとした現場なんですね! 清原さんと菊池さんの会話劇もリアルな幼なじみ感が出ているなと感じています。
「役柄での会話と、普段3人で話している感じがあまり変わらないのがいいのかもしれません。菊池さんがふざけて場を盛り上げて、それを果耶ちゃんと私で無視するっていうのが王道パターン(笑)。果耶ちゃんと菊池さんは年齢が結構離れていますし、私も菊池さんの1個下なので、私たちがあまり気を使わないように接してくださっているんだと思います」
――3人の絆を感じるシーン、これからも楽しみです! ちなみに藤原さんは音楽活動も行われていますが、音楽で得たものがお芝居に生かされていると感じることはありますか?
「お芝居と歌には、自分じゃない誰かになるという部分で通ずるものがあるのではないかなと思っています。歌では自分の感情を発信するだけではなく、男性目線の曲を歌うこともありますし、私の場合はカバー曲を歌わせていただく機会もたくさんあって、曲の主人公に感情移入することが多いんです。以前、ちあきなおみさんの『喝采』を歌っていたら、なんて切ないんだろうって号泣したこともあるくらい没入してしまいました」
――藤原さんが自然と凛に感情移入しているからこそ、視聴者も共感しやすくなっているのかもしれませんね! 藤原さんの楽曲の中に「かわいい」という曲があると思います。その歌詞が「凛の心情にぴったりすぎる!」というツイートを見かけて、あらためて聴き直したのですが、凛の女の子の部分がギュッと詰まったような楽曲だなと思って聴き入ってしまいました。
「『かわいい』は10代の時に書いた曲です。恋をすると、頭で理解していることと心で思っていることの相違が生まれてくる時があると思うんです。本作でも、花枝と芦田がムササビを買うシーンで、『恋はきっと矛盾だらけなんじゃないかな』というセリフが出てくるのですが、本当にその通り。あの楽曲はその“矛盾”を歌っている曲です。序盤では、『日常の中でそばにいて一緒に笑いあうだけで十分なんだ!』って歌っているけど、終盤では『全部うそです。それじゃ満足できません』という気持ちが吐露されています。恋する女の子はその矛盾した感情を知っているんじゃないかな。凛もすごく分かりやすく恋をしているので、リンクした部分があるんだと思います!」
――そんな凛の恋の行方も終盤に向けて気になるところですが、今後の凛の見どころはどこでしょう?
「ここからは凛のお姉さんらしいところがもっと描かれる展開になると思うので、そういう部分も楽しみにしていただきたいです! 私も今後の展開がどうなるか分からないのですが、凛の恋も進展したらいいですね…。(と、一瞬思案して)でも実は、客観的に見ていると慎吾には花枝を好きなままでいてほしいって思う気持ちがあったりするんです。凛の気持ち的にも、“花枝のことが好きな慎吾”が好きだったりするのかなって。いちずな彼が好きなんですよねきっと(と、空を仰ぎ撮影を振り返る藤原さん)」
――うわ…それ、めちゃめちゃつらい…。
「本当につらい立ち位置ですよね(と、苦笑)。それぞれに思いの矢印があって、誰かが幸せになると誰かがしんどくてつらい思いをしてしまうという悲しい矢印の向き方だとは思うんですけど、一人一人の気持ちが少しずつ、一つずつ報われるといいなって思っています。とりあえずカップルが成立するみたいなのではなく、それぞれが成長できる展開を私も期待しています!」
インタビューを終え、スタッフが「慎吾はまだ凛の気持ちに気付いていないだけだからね」と凛への励ましの言葉を掛けると、「慎吾だけじゃなくて、本作に登場するキャラクターはみんなすごく鈍感なんですよね。昨日撮影していたシーンでも、おかしいんじゃないかってくらいみんな鈍感だったんです。これはもう言葉に出しているに等しいでしょ!って。なんで伝わらないんだろうってことだらけです(笑)」とアフタートークを披露してくれました。
話しているのは藤原さんと意識はしていても、どこか凛の恋愛相談を聞いている気持ちになるほど自然に凛に感情移入していた藤原さん。そんな切ない片思いの矢印を冷静に見つめるまなざしも印象的でした。インタビューで登場した藤原さんの楽曲「かわいい」も必聴です!
【プロフィール】
藤原さくら(ふじわら さくら)
福岡県出身。父の影響で10歳で初めてギターを手にする。洋邦問わず多様な音楽に自然と親しむ幼少期を過ごし、高校進学後オリジナル曲の制作をはじめ、少しずつ音楽活動を開始。2015年3月18日、スピードスターレコーズよりEP「à la carte」でメジャーデビュー。音楽のみならず16年4月からスタートしたフジテレビ系月9ドラマ「ラヴソング」にヒロイン役として出演し、同作品の主題歌「Soup」も担当した。19年春と20年春に上演された劇団☆新感線39興行・春公演 いのうえ歌舞伎「偽義経冥界歌(にせよしつねめいかいにうたう)」にて舞台初出演を果たす。現在、LINE NEWS VISIONで「つながりたくて、嘘をつく2」が配信中。天性のスモーキーな歌声は数ある女性シンガーの中でも類を見ず、聴く人の耳を引き寄せる最新デジタルシングル「mother」も配信中。
【番組情報】
「ファイトソング」
TBS系
火曜 午後10:00〜10:57
【プレゼント】
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https://twitter.com/TVGweb/status/1494600177692250115
【締切】2022年3月17日(木)正午
取材・文/A・M(TBS担当) 撮影/蓮尾美智子
スタイリスト/伊藤信子 ドレス ¥46,200/Sea New York その他/スタイリスト私物
問い合わせ先:BRAND NEWS (03-3797-3673)
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