町あかりの「テレビの仕事人に会いたい!」 <第4回 山岸慎一郎さん(MAミキサー)>2019/09/07
シンガー・ソングライター 町あかりが、テレビの裏側を支える「テレビの仕事人」から、あんな話、こんな話を聞いちゃう連載企画! 今回はナレーターの服部潤さんからのご紹介で、MAミキサーの山岸慎一郎さんに会いに行きました。
前回の服部潤さんいわく「山岸くんは『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)で僕のナレーションを録ってくれていたんですが、真面目な人でとても信頼しているんですよ」とのこと! そんなベテランナレーターからの信頼も厚い山岸さんに、今回はテレビ番組での「MAミキサー」のお仕事についてお話を伺いました。
<MAミキサーのお仕事って?>
── テレビ番組における、MAミキサーのお仕事はどういったものなのでしょうか?
「『MA』とは『マルチオーディオ』の略です。簡単に言うと、テレビ番組で収録され、編集された音を、最後に整えるのがMAミキサーの仕事です。例えば外での収録の場合、周りの音がうるさかったら下げて、タレントさんの声を聞こえやすくしたり。流れとしては音声さんが収録した音に、音響効果さんが音楽や効果音を付けて、最後にMAミキサーがそれらの音を調整してバランスをとります。あとは服部さんのようなナレーターさんの声を収録する仕事もありますね」
── テレビ番組の音の作業って、そんなに役割が分かれているんですか! 知りませんでした…。今までで、大変だったエピソードなどありますか?
「音の編集は番組作りの最後の工程なので、かなりギリギリのスケジュールの時もあります。僕も何度か経験しましたが、2時間スペシャルのバラエティー番組で、すでに放送が始まっているのに後半部分の作業がまだ終わっていない…なんていうことも(笑)」
── えー!? ということは、私たちがのんきに笑って見ている裏で、MAミキサーの方が血眼になって作業している場合もあるんですか…。普段は、どんな人とやりとりをして、作業を行うのですか?
「基本的にディレクターの方とやりとりをします。例えば『今回はBGMは小さめだね』とか『お客さんの笑い声はこのくらいで~』ということを話したり。ちなみに最近はスタッフの笑い声などは極力小さくする傾向にありますね。例えば昔、『ドリフの大爆笑』(フジテレビ系)におばちゃんの大きな笑い声が入っていましたが、それと逆ですよね(笑)。時代によって変わっていっています」
<きっかけは「間違えちゃったから」!?>
── ところで、山岸さんがMAミキサーを志したきっかけは?
「高校時代にドラムをやっていたこともあって、最初はレコーディングエンジニアに興味があったんです。それで音響技術専門学校に入ったのですが、『レコーディングエンジニアは年に1~2人しか募集がない』『しかも激務でなかなか家に帰れないらしい』という話を聞いて、『こりゃ無理だ!』と思いまして。そのうち、映像に音を付ける作業に興味を持って。それでMAミキサーとして『IMAGICA Lab.』という会社に就職したのですが、最初に話した通り、映像に音を付けるのってMAミキサーじゃなくて、音響効果の人がやる仕事なんですよね。つまり、間違えて入っちゃったんです(笑)。MAミキサーも面白い仕事なので結果的に良かったんですけどね! だから専門学生の若い子たちには『間違えないようにしてね』って言ってます(笑)」
── まさか「間違い」がきっかけだったとは!(笑)。だけど、もともと音楽活動をされていた山岸さんにとって、音の調整を繊細に行うMAミキサーのお仕事が偶然にも適職だったということですね。
<目立たないことが「いい仕事」>
── このお仕事をする上で、大切にしていることはなんですか?
「“良い音”の定義についてですね。例えばテレビ番組と映画とCDと…でそれぞれ違うんですよね。テレビ番組における、良い音は、家庭の中でお母さんが食器を洗っていたり、家族がしゃべっている中でも、手が止まるような音。CDみたいに高い音から低い音までを奇麗に聞かせる…というものではなくて、とにかく伝えたいところだけを残すことが大事なんです。僕たちはそれをよく“硬い音”と言っているのですが、それがテレビ番組においての、良い音ですね。最近はインターネット配信番組もあるので、小さいスピーカーやイヤホンでも聞いて確認することがあります。そんなこともあって、良い音の定義がまたこの10年でも変わりましたね」
── では最後に、山岸さんはどんな場面で達成感を感じるのでしょうか?
「やはり親や友人に『番組面白かったねー!』と言ってもらうことです。その時『音が良かった』という感想は別にいらないんです。音のことを意識させないで普通に楽しく見てもらうことが、MAミキサーにとっての良い仕事だと思っています」
スゴイ! まさにテレビを支える「テレビの仕事人」ならではの考え方ですよね。お話を伺う前は、MAミキサーという職業名から“技術者”というニュアンスを感じていましたが、技術者でありながら実はクリエーター、アーティストのような感性が問われる面もある仕事だということが分かりました!
ちなみに山岸さんは、現在「ジャパンメディアクリエイト株式会社」を設立し、そちらでフジテレビの「痛快TVスカッとジャパン」「今夜はナゾトレ」「99人の壁」「ネタパレ」「久保みねヒャダこじらせナイト」などの番組に携わっているそうですよ。このインタビューを読んだ上で見てみると新たな発見があるかも? ぜひご覧くださいね。
さて、読者の皆さまから「テレビ番組のこんなことが知りたい」「こういう職業の人の話を聞いてみたい」というリクエストや、ご感想も大募集しています。次回もどうぞお楽しみに!
【ご意見・ご感想etc.を募集中!】
町あかりの「テレビの仕事人に会いたい!」に関するご意見・ご感想、ご要望は下記アドレスまで。抽選で、町あかりさんのアルバムを7名様にプレゼントいたします。
machi-honoji@tokyonews.co.jp
町あかり
シンガー・ソングライター。作詞・作曲、編曲、イラスト、衣装制作まで自身で行う。2017年ビクターエンタテインメントからメジャー3rdアルバム「EXPO町あかり」をリリース。現在、4thアルバム「収穫祭!」が発売中。他の歌手への楽曲提供も行う。文鳥を溺愛中。
★オフィシャルブログ:http://akrmc.blog135.fc2.com/
★オフィシャルTwitter:https://twitter.com/mcakr
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