岸辺露伴を演じる高橋一生が各話の見どころを紹介!「第4話はタイトルに反してアクティブに動きまくります」2021/12/25
2020年12月に放送され、話題となった高橋一生さん主演の「岸辺露伴は動かない」の新作が12月27日から3夜連続で総合テレビにて放送されます。
荒木飛呂彦さん原作のコミック「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズから派生した「岸辺露伴は動かない」シリーズは、相手を本にして生い立ちや秘密を読み、指示を書き込むことができる“ヘブンズ・ドアー”という特殊能力を持った漫画家・岸辺露伴(高橋一生)が、奇怪な事件や不可思議な現象に立ち向かう物語。自身も露伴ファンだと公言している高橋一生さんから、続編への思いや、新作の見どころを伺いました!
――昨年、「次があったらいいな」とおっしゃっていましたが、その次がやって来ました。率直な今の気持ちをお願いします!
「準備から数えると、丸1年。年をまたいで同じ役を演じることは、なかなか経験できないことなので、充実した時間を過ごせました。ずっと岸辺露伴という人間から離れないでいられることに『幸福な時間だな』と。さまざまなところで『良かった』という声を聞きましたが、浮かれられない感じはありました。もちろん、うれしいという気持ちはあったのですが、粛々とお芝居をしていきたいなと。そういう喜びは表面上、見えなかったかもしれないけれど、心の中では静かに盛り上がっていたんです。また、前回とほぼ変わらないスタッフの方々が参加してくださっていたので、やりやすく、とても幸せな時間でした」
――前作は原作ファンだけでなく、原作も「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズも全く未経験という人たちも初めて見てハマってしまった人が多かったように思います。初心者も楽しめるよう意識されていたことや、工夫されていたことはありますか?
「それは何より作劇バランスの素晴らしさだと思います。脚本の小林(靖子)さんや演出の(渡辺)一貴さん、人物デザイン監修の柘植(伊佐夫)さんなど、制作陣の皆さんが非常に緻密に作り込んでくださったおかげです。自分たちが生きている日常と地続きのようなところを多分に残しつつ、どこか違和感があるような世界を作っていくことができました。自分の芝居に関しては、露伴のキャラクターを説明するための第1話の冒頭が勝負だと思っていたので、そこに注力していました。僕は一貴さんは大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK総合ほか)で長い間ご一緒していたので、一貴さんが『これはダメだ』と感じている時や、『これはすごいぞ』と思っている空気感が何となく分かるんです。僕の勘違いでなければ、その第1話の冒頭を撮影した時に、一貴さんの手応えを感じることができたので、非常に良いものができたと感じました」
――前作では、世界観に合った菊地成孔さんの素晴らしい音楽を作品完成後に聴かれたのではと思います。今作はその音楽を聴いた上で演技されたとすると、音楽が演技に影響したことはありますか?
「前回、第2話『くしゃがら』の撮影をしている時に音楽を菊地さんにお願いしていると伺って、その撮影の帰り道に菊地さんの音楽を聴きながら帰りました。菊地さんの音楽はこれまでも『ペペ・トルメント・アスカラール』などの作品を聴いていたので、そういう世界観で行くんだなと想像が膨らみました。音楽は非常に重要なファクターなので、すぐにその世界観を共有できたことはとても良かったです。今回、菊地さんがコメントされた露伴のテーマタイトル“大空位時代”というのも僕はとても好きで、役を演じる上で、非常に血肉になるワードだなと感じました」
――前回、高橋さんが露伴のことを“露伴ちゃん”と呼ばれていたことに、原作愛を感じたという声が多く寄せられました。今作を演じたことで、あらためて“露伴ちゃん”に対する思いは深まりましたか?
「まさか“露伴ちゃん”というワードから、愛を感じてくださるとは思っていなくて、それが愛として伝わったことは単純に驚きではありました。うれしくもあり、不思議な感覚です。普段お芝居をする時は、自分の中にあるものを出力して外に出していくのですが、露伴ちゃんを通じて…、また露伴ちゃんと言っちゃいましたが(笑)、今回は露伴という人間を知っていく過程をじっくり用意していただいたからか、入力も出力も同時にできていました。彼を通じてさまざまな体験をすることができ、充実した時間を過ごせました」
――今回は第1話から第3話までのベースがある中で新たなものを作られたわけですが、撮影に入る時に意識したことや、自分に課した課題はありますか?
「第3話が終わった後も露伴が人間として活動していた感じを出したかったので、露伴の生活の息吹を感じられるよう意識していました。また、第1、2、3話を経ての露伴ではありますが、第4、5、6話から見ても、第1、2、3話を違和感なく見られるようにできたらとも思っていました。僕がそれをできたのは、美術部の方々をはじめ、すべての撮影スタッフの皆さんのおかげです。1年も開いてしまうと、同じセットが用意できないことも多い中、今回、露伴邸の中のデザインがほとんど変わっていなかったんです。すぐに露伴として生活できて、それはお芝居をする上でとても助かりました。皆さんが露伴を生かし続けてくれていたありがたい現場でした」
――高橋さんが思う第4話から第6話までの見どころを伺いたいです。まずは、笠松将さんが演じる橋本陽馬と露伴がランニングマシンで対決をすることになる第4話「ザ・ラン」についてお願いします。
「第4話はとにかく走ります。笠松さんが体力もあって身体も相当鍛えている方で、説得力があったので、お芝居のしがいがありました。『岸辺露伴は動かない』というタイトルに反してアクティブに動きまくります。これまで精神的に戦うことが多かった露伴ですが、物理的に肉体を使って戦うのは第4話が初めてなので、そこを見ていただきたいです」
――では、市川猿之助さんが絶対に背中を見せない男・乙雅三を演じる第5話「背中の正面」はいかがでしょうか?
「猿之助さんがとても面白くてとても怖い回です。第5話は『ジョジョの奇妙な冒険』本編のエピソードを『岸辺露伴は動かない』の世界に移し替えているのですが、脚本の小林さんがどれだけ『ジョジョ~』と『岸辺露伴~』を読み込んでいるのかがはっきり見えてくるエピソードです。また、猿之助さんとのお芝居が非常に演劇的で、中には一連で撮影して一発でOKになったところもあり、いい意味で緊張した状態で演じていたので、切迫した感じや、露伴が猿之助さん演じる怪異と生き生きと対決する様子が伝わると思います」
――そして、第6話「六壁坂」では、妖怪伝説の謎を追う露伴が内田理央さん演じる大郷楠宝子と出会うことで驚がくの真実を知ることになりますよね。
「第6話は、小林さんが第4話『ザ・ラン』と第5話『背中の正面』の怪異を“六壁坂の怪異”として一つにまとめています。僕個人としては、“六”壁坂なのに、まだ三つしか怪異が出ていないことに、何となく感じるものがあります。そして、内田さんが演じられている大郷楠宝子という人物が、『六壁坂』の世界観全体を総括するキャラクターになっています。これは前作の第1、2、3話にも共通するのですが、大きく分けて第1部(第1、2、3話)、第2部(第4、5、6話)構成として考えると、第3話の 『D.N.A』 と第6話の『六壁坂』は、人間的な怖さに迫っているなと。怪異はあくまでも怪異ではあるのですが、その裏には人間の怖さが眠っていて。それは『D.N.A』でも静かに怖いなと思っていたことだったんです。三つ目のエピソードは必ずそういった形になっているところに、小林さんの作劇のセンスを感じていました」
――露伴は飯豊まりえさん演じる泉京香といいコンビに見えます。印象的なやりとりがあったら教えてください。
「印象的なやりとりは…ないですね(笑)。第1、2、3話から第4、5、6話にかけて、まるで時間がたっていないような…。第3話の後も露伴と泉くんは漫画家と編集者という関係性で、ああだこうだやっていたんだろうなと感じることができたので。飯豊さんの明るい人柄も相まって、すぐにそういう感覚になれました」
――露伴を通じていろんな体験ができているとおっしゃっていましたが、それはどんな体験ですか?
「お芝居は、役を通してさまざまなことを疑似体験していくわけですが、露伴は、おおよそ日常では体験できないようなことを経験します。例えば『くしゃがら』を見つけた時には、何か分からないものに対して『これはもしかしたら、こういうことかもしれない』と1人でしゃべっているんですが、顔が本になっている男に対して、恐れおののいているという状況になるわけです。第1話『富豪村』では、マナーの試験を課す一究(柴崎楓雅)と対決している時に、マナーを間違えた代償として右腕が動かなくなってしまうのですが、はたから見ると子どもと口げんかをしているようにしか見えない。ふとわれに返ると、それらはとても不思議な体験で、この作品だからこその経験だったので、自分の中に強く残っています。さらに言えば、人の心や記憶を本にして“読める”ことが一番の体験なのかもしれません。しかも書き込める能力があって。今までやらせていただいた作品の中では、そういう特殊能力を持っている人間はいなかったので、僕にとっては鮮烈でした」
――1年間、ずっと露伴が自分の中にいたというのはどんな感覚なのでしょうか?
「演じた役は自然と抜けていくんです。所作などが少しずつ薄れていくことに、寂しく感じる瞬間もありますが、こと露伴においては、そういうものが抜けなかったんです。それはきっと続編が作られるであろうという感覚があったことに加え、今までにない体験ができていたので、鮮烈に残っていたんだと思います。自分が高校生の時から好きだったキャラクターを、自分の内側に落とし込んでいく作業ができると思っていなかったので、いつもより離れなかったという感じでした。僕が離れたくなかっただけなのかもしれませんが、離れなかった感じはありました。ですので、お芝居で苦労した部分は全くなかったです」
――大空位時代について、もう少し具体的に教えてください。また次回があってほしいという願いも込めて、もし第3部があったら何をしたいですか?
「大空位というのは、王位などを受け継ぐ時に全く空白の政権の時代のことを指すのですが、そこに露伴はいると。常に大空位でなくても、彼の中では空位時代であることが役を演じていく上で感じられる部分ではあったんです。『菊池さんはそういうふうに感じてくださっていたんだ』という喜びがありました。露伴が孤高であり、独自であるということを感じてくださっていたことは演じる上で参考になりましたし、役を演じる上での肉付けの一つになったような気がしています。次があったら…どういう物語が来るかにもよりますが、露伴という存在がブレないでいたいです」
――ありがとうございました!
【プロフィール】
高橋一生(たかはし いっせい)
1980年12月9日生まれ。東京都出身。ドラマ、映画、舞台など幅広く活躍。2022年1月10日スタートのよるドラ「恋せぬふたり」(NHK総合)、22年春放送予定の「雪国 -SNOW COUNTRY-」(NHK BSプレミアム・BS4K)に主演する。
【番組情報】
「岸辺露伴は動かない」
12月27日・28日・29日
NHK総合
午後10:00~10:49
12月30日
NHK BS4K
午後7:30~9:57(第4~6話一挙放送)
取材・文/K・H(NHK担当) 撮影/尾崎篤志 ヘア&メーク/田中真維(マービィ) スタイリスト/秋山貴紀
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