後妻として渋沢栄一を支える兼子役の大島優子が印象深かったシーンとは?2021/11/29
第37回(11月28日放送)の大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合ほか)で、伊藤兼子(大島優子)と再婚した渋沢栄一(吉沢亮)が突如、兼子から離縁を告げられた後、お互いに正直な気持ちを打ち明けたことで、改めて夫婦として進んでいく姿が描かれましたね。千代(橋本愛)亡き後、栄一と添い遂げる兼子を演じた大島優子さんに、兼子の人物像や栄一への思い、離縁を迫るシーンの撮影エピソードなどを伺いました!
――大島さんは大河ドラマ初出演となりますが、「青天を衝け」に出演することが決まった時の気持ちを教えてください。
「連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合ほか)で熊谷照子役を演じていたのが去年の3月なのですが、それから間もなく大河ドラマのお話をいただいて…。予想していなかったので、とにかく光栄でうれしかったです。その後、栄一の後妻となる伊藤兼子という、とても重大な役で、しかもラストスパートをかけたところで登場することを知って、うれしさ半面、怖さが急にどっとあふれて…。プレッシャーで胃が痛くなる日々でした(笑)」
――兼子はどんな人物だと思われますか?
「兼子は実家が没落し、妹たちの面倒を見るために置屋に入り、芸者として生きる覚悟を決めた後、渋沢家に後妻として入ることになります。後妻になることも彼女なりにすごく大きな覚悟を持った上で『そういう運命なんだ』と受け入れて…。波乱な人生が一気に訪れるのですが、そこは肝が据わっていて、女性らしい強さがある人だなと思っています」
――演じるにあたって、兼子の資料を読み込むなど、事前に準備されたことはありましたか?
「自分なりに調べたのですが、兼子さんの資料はあまりないんです。だから、当時の時代背景やどれだけ子どもがいて、どれだけ親戚がいるのか、渋沢家の家政を担うことに関してもどこまでやったのかなどを考えながら、1個ずつ積み上げて作っていくしかないなと。大変ですが、あまり情報がない分、自由度は高くて自分らしい兼子を作り上げることができたと思います」
――第37回で、栄一に「離縁してくださいませ」と伝えた彼女の誇りや矜持(きょうじ)をどのように捉えていらっしゃいますか?
「この時代は、三歩後ろに下がって男性を立てる風潮だったと思うのですが、兼子は強い意志を持っている女性。渋沢家に入った時にすぐに家族になじめないことは分かっていたとは思いますが、それでも心が折れたと思うんです。自分からなじんでいかなければと努力を持って生活していたけれど、うまくいかなくて。栄一に対して面と向かって思いを伝えるシーンは、自分の意見を主張していくべきなんだという兼子の意志の重みを感じていました」
――実際に撮影して、兼子のセリフについて感じたことはありますか?
「頭の良い言葉の並べ方で、隙がないくらいごもっともだなと。撮影中は兼子のセリフを自分の中に落とし込んで感情で話しながらも、自分を律している女性であることを気にしながら演じていました」
――限られた時間の中で、そういう役を演じるのは大変でしたか?
「最初に声のトーンや話し方のスピードも監督と一つずつ作っていきました。私も視聴者として作品を見ていたので、千代とは対照的な方がいいのかなど、兼子の在り方をすごく考えました。第37回の栄一に自分の思いを吐露するシーンは、撮影が進んだ後半のスケジュールだったので、本当にありがたかったです」
――兼子は、栄一にどんな感情を抱いていると思われますか?
「兼子は感情がなくてもいいと思って渋沢家に嫁いだけれど、思いがないとどうにもならないことに、ふと気付くんです。栄一が千代を思うことも、兼子が家政をやることも、仕事のパートナーとしてやっていくのもいいけれど、そこには感情がないと私は耐えきれないですよと栄一に伝えて。そこがすごく人間味があるし、またそれを栄一が理解してくれて心がお互い通じ合うんです。あれがあったから、兼子は栄一と添い遂げようと決めたんだと思います」
――兼子について思うことや、共感できた部分などはありますか?
「兼子が渋沢家に入ってからの栄一は、何度も千代のことを思い出すんです。その姿を見ると寂しいですが、兼子は栄一がそれほど思い人を大事にする人間であることが素晴らしいなと感じていて、千代に対する思いを大事にしてあげようと思うので、強くて懐が深い女性だなと。栄一の思いをくみ取った上で養育院も大切にしようと思うし、プラスアルファで自分に何ができるか、兼子なりのやり方を見つけ出す。すべてをまるっと包み込むような母性があっていい女性だなと思いました(笑)。また兼子はぶれない人だなと感じていて、そこは共感する部分があります」
――後妻として渋沢家に入りますが、渋沢家の皆さんと撮影した時の雰囲気はいかがでしたか?
「兼子が渋沢家になじめたのは歌子(小野莉奈)がいたからです。歌子がちゃんとフォローして、兼子に寄り添ってくれていました。歌子役の小野莉奈ちゃんとは一緒にいるシーンが多かったし、実際、年も離れているので、すごくかわいくて自分の娘のようにいろんな話をしました」
――兼子は晩年まで精力的に活動する栄一に連れ添いますが、心掛けた点や工夫したことはありますか?
「栄一は本当に愛嬌(あいきょう)があって、常に心に遊びのある人だと思いながら接しています。栄一の一言や行動でハッとするというか。正しい方にも大変な方にも人を振り回す方なのでこっちにも影響があり、それに自然と心を動かされる感覚でいるように心掛けました。また、晩年まで描かれるので、どれくらいの年齢を重ねていて、どれくらいの距離感で栄一と歩いているかなど、細かいところまで監督と相談したのですが、毎回『これでいいのかな、大丈夫かな、合っているかな』と悩みましたね。1シーンごとに常に頭を抱えながらやっていました(笑)」
――栄一を演じる吉沢さんと共演された感想を教えてください。
「エネルギーがすごいです。こちらに与えてくれるエネルギーもそうですし、ご本人の中に燃えたぎっているエネルギーもすごく感じます。だから緊張感も生まれるし、自分ももっとやりたい、もっと隣にいられるような人でいたいと思わせてくれる方です」
――お二人で共演するシーンが多いと思いますが、印象深いシーンはありますか?
「第40回(12月19日放送)に栄一の仕事でアメリカを視察旅行するシーンがあり、オリエンタル急行みたいな汽車の客室を作っていただいて、1日かけて撮影をしたのがとても楽しかったです。年齢を重ねて老いた風貌だと気持ちも沈みがちなのですが、兼子と栄一がすごく楽しそうで。心がワクワクして、セリフもそれに乗っかって楽しくなっているみたいな。皆さんにぜひ見ていただきたいです」
――ありがとうございました!
【番組情報】
大河ドラマ「青天を衝け」
NHK総合 日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム・NHK BS4K 日曜 午後6:00~6:45
NHK担当 K・H
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