宮野真守◆「僕だけはキャラクターの味方でありたいと思っています」2019/09/11
今回の「恋するVoice!」には、1982年に刊行されて以来、熱狂的な支持を得ているベストセラー小説「銀河英雄伝説」を原作とした「銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱」で主演を務める宮野真守が登場。同作は、昨年放送された1stシーズン「銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅」の2ndシーズンとして劇場上映される作品で、宮野は引き続き、銀河帝国軍を率いる主人公・ラインハルトを演じている。宮野が、作品についての思いやアフレコ現場の様子、共演者とのエピソードなどをじっくり語ってくれた。
──1stシーズンのアフレコから2ndシーズンまで、どれくらい間があいたのですか?
「僕らは1stシーズンからずっと続けて毎週収録をしていて、これから上映される『銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱』第三章までのストーリーを演じていたんです。ご覧になっている方には期間が空いているように感じられるでしょうけど、プロジェクトとしてはしっかりと地続きで演じられたので集中できましたね」
──ラインハルト役はオーディションで決まったそうですね。
「オーディションを受けるにあたって原作に触れることになって、小説の世界観の美しさにひかれて没入していきました。人物描写が独特かつ想像力をかき立てられる描き方なので、こんな表現の仕方ができるんだと感銘を受けました。そして、『銀河英雄伝説』という物語の世界が本当に実在したかと思わせるような壮大なストーリーと設定が素晴らしく、SFで架空の世界なのに、こんなに緻密に構築できるのかという驚きもありましたね」
──ラインハルトの役を勝ち取りたいという思いが非常に強かったそうですが、思いが強くなった理由は?
「作品の内容ももちろん大きいですし、さらに三間(雅文)音響監督の存在もとても魅力的でした。以前の作品でも三間さんからいただいたものが非常に大きかったんですが、今回も、また違った思いみたいなものが見えてくるんじゃないかと思って、その感覚をまた味わいたかったんですよね。三間さんにとっても『銀河英雄伝説』が特別な作品だということを伺っていたので、そこで自分に何ができるかということも体感したかった。三間さんが作る『銀河英雄伝説』の一員になりたかったんです」
──ラインハルトを語る上で欠かせないのがお姉さんのアンネローゼ(坂本真綾)と親友のキルヒアイス(梅原裕一郎)ですよね。
「ラインハルトが銀河帝国軍内で上り詰めて腐敗した貴族社会を変えたいと思う根底の動機は、アンネローゼなんですよね。アンネローゼのために天下を取りたいという思いがラインハルトとしては大きいんですけど、その思いを唯一分かち合って共有できるのが子どもの頃から一緒だったキルヒアイスなんです。だから彼は友達ではない、家族でもない…、それ以上の、もう1人の自分自身というくらい心のつながりがあるんです。そして2人にとっての正義を追求していくんですが、苛烈な性格のラインハルトがキルヒアイスがいてくれるおかげで冷静になれることがしばしばあるので、切っても切れない関係なんですよね。ラインハルトはある意味、キルヒアイスに甘えられるというか、彼がいてくれるからこそ苛烈にいける、自分が間違ったとしても彼が正してくれるっていう信頼感と安心感があって、だからこそ強く進んでいけるんだと思います」
──キルヒアイスを演じる梅原さんとの関係性が大事になってきますよね。
「梅ちゃん(梅原)とがっつりタッグを組むのが初めてだったので、今回をきっかけに言葉を交わす機会が増えていきました。作品関連の取材もそうだし、別の現場で会った時に以前とは違うつながりを感じる瞬間もあって…。梅ちゃんは何事もシュッとやれる子だなと思っていて、イメージ的には以前とあまり変わってないんですけど、実は繊細な子だなあっていう内面を今回で知ったっていう(笑)」
──それはどういう面で?
「ちょうどこのオーディションの時に、ずっと台本を読みながらブツブツ何か言ってたから、『緊張してるの?』って聞いたら、『緊張してますよ!』って言っていたので、『あ、梅ちゃんでも緊張するんだ! 一緒だね』なんて言って(笑)。ガチガチに緊張している姿がかわいかったです(笑)」
──ずっとラインハルトを演じてきて、役者として宮野さんが成長できた部分はありますか?
「ラインハルトの感情の揺らぎや渦巻きは、実は『星乱』で描かれるんですよ。だから詳しくは言えないんですけど、そこにラインハルトとしての成長があって、周囲に起こる事象について自分がどう対処していくべきなのかを自身で見いだしていくんです。僕がラインハルトを通して成長できたと思うのは…、自分ではない人生を生きることによって、こういう生き方、立ち方、見え方があるんだとあらためて感じたことですね。いわゆる貴族がいて、当たり前のように日常に戦争があるという世界で、どのような心情でいるのかということは、最初に監督と音響監督にも話していただいたことでした。そういう日常の中で、生きていくためにさまざまな判断をしていくラインハルトの心の動きや考え方に、自分自身も心が動いていったことが役者としての新たな発見でしたね」
──日常の中で宮野さん自身も“ラインハルトだったらこういうことを考えるのか”と思うんでしょうか?
「日常的にふとそう思ってしまうこともありますね。でも、あくまでも台本の中でラインハルトがどう感じるかということに集中していたので、僕が日常の中でラインハルトみたいにワイングラスを“バリンッ!”と割ったりはしてないです(笑)」
──ラインハルトについて共感できるところはありますか?
「自分が共感しないと演じられないと思いますし、僕はどんな役を演じるにしても共感というか否定をしないんです。時には、非道なキャラクターもありますけど、そういうことをする理由や、彼の中の正義を探したい。できれば僕だけはそのキャラクターの味方でありたいと思っています」
──なるほど。そういう点でラインハルトに感銘を受けたところは?
「やっぱり立ち上がることができる姿勢はリスペクトです。自分がつらい思いをした時、そこで負けてしまうのではなく、“じゃあ、自分が変えてみせよう”と立ち上がるし、さらに自分が支配するビジョンまで描くくらいの心の強さがすごいと思います」
──では、最後に作品の見どころをお願いします。
「本当に丁寧に原作をリスペクトして『銀河英雄伝説』の世界を描いています。だからこそ見せられる登場人物たちの心の機微が非常に興味深いし、毎回名言が飛び出します。演じることで『銀河英雄伝説』の面白さを身をもって知って、収録の合間にヤン役の鈴村(健一)さんと“『銀河英雄伝説』ってやっぱりすごく面白いね!”って盛り上がったりして…。それくらい登場人物たちの生き様に感銘を受け、この世界観に魅了されると思うので、ぜひお楽しみください」
【作品情報】
「銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱」
第一章:9月27日/第二章:10月25日/第三章:11月29日
各章3週間限定劇場上映
はるか未来の宇宙。ヤン(鈴村)を司令官とする自由惑星同盟軍と、ラインハルト(宮野)が元帥の銀河帝国軍が対戦。同盟側は大きな痛手を受けるも戦闘続行を決定する。その後、完全なる勝利を求めるラインハルトは新たな星域へ進攻し…。原作は田中芳樹の同名小説。配給:松竹メディア事業部
【プロフィール】
宮野真守 Mamoru Miyano
1983年6月8日埼玉県生まれ。ふたご座。B型。アニメ「あひるの空」(テレビ東京ほか)が10月2日、「ちはやふる3」(日本テレビほか)が10月22日放送開始予定。映画「HUMAN LOST 人間失格」が今秋、「劇場版Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-」前編Wandering; Agateramが2020年公開予定。
取材・文/熊谷真由子 撮影/Marco Perboni
ヘア&メーク/Nakatani(C+) スタイリング/横田勝広(YKP) 衣装協力/エムステージ
この記事をシェアする