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森川智之◆「未来のために、今はたくさんのことに興味を持って、アンテナを張っていきたい」2019/07/17

森川智之◆「未来のために、今はたくさんのことに興味を持って、アンテナを張っていきたい」

アニメ「クレヨンしんちゃん」(テレビ朝日系)の野原ひろし役、「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」(2016年)の吉良吉影役など、数々の人気キャラクターを演じる一方、トム・クルーズ、ユアン・マクレガー、キアヌ・リーブスらの吹き替え声優としても知られる森川智之。特に、トムからは本人の公認を与えられたことで有名だ。そのトムが主演する「ミッション:インポッシブル」シリーズ5作品が、7月21日に洋画専門チャンネル ザ・シネマで一挙オンエアされる。吹き替えはすべて森川によるもの。そこで、作品の魅力やトムとの関わり、そして声優業の未来までを聞いた。

森川智之◆「未来のために、今はたくさんのことに興味を持って、アンテナを張っていきたい」

──この企画を聞いた時の感想を教えてください。

「吹き替えに特化した企画で、しかも一挙放送。すごくうれしかったですね。トム・クルーズをやっていてよかった!(笑)」

──新しく吹き替えを収録し直したものはあるのでしょうか?

「新録はしていません。何と、今回、1作目と2作目はテレビ朝日で放送されたバージョン(未ソフト化)がオンエアされます。その2作は、トムが演じる主人公のイーサン・ハントも若いし、僕も若い! きっと、今吹き替えを収録し直すと、初期のイーサンのエッジが効いた若さがなくなってしまい、あざとくなる可能性もあるかなと思うんです。あの危なっかしいリーダーだったイーサンが見られることを、すごく楽しみにしています」

──5作品が連続オンエアされますが、見どころは?

「見どころは1作、1作それぞれにあります。この『ミッション:インポッシブル』シリーズの魅力は、作品ごとに監督が変わること。その監督の色が出るのはもちろんですが、“トム・クルーズと、彼が演じるイーサンをどうやって見せるか”もそれぞれ。例えば、ジョン・ウー監督による2作目では、冒頭でトムが険しい崖をクライミングしていくんですが、トレーラーを見た瞬間に、“何てカッコいいんだろう!”と鳥肌が立ちました。僕はあまり高いところが得意ではないこともあり、すごいなと思いました。しかも、そこからにこやかに笑いながら飛ぶじゃないですか! そして、崖の上に達した時、ミッションの指令がサングラスを通じて伝えられ、トムがサングラスを投げるとそれが爆発した瞬間に物語がスタートする…。シリーズ通してのスタートの仕方が出来上がった気がしました。イーサンが一番ギラギラして、体力的にも余裕があって、スーパーマン的なすごさを見せた2作目からの、スパイの現役を引退している状態から始まる3作目。1作ずつで完結しているように見せながら、イーサンがどんどん成長していくのも魅力ですね」

──2作目が特にお気に入りですか?

「というわけではないんです。いっぱい見どころがありすぎて…。ただ、2作目にはアクションもあればラブロマンスもあって、車がスピンする中でイーサンと女性の目線が合うシーンは映画史上に残るというか…、すごいと思いました!」

──毎回、派手なアクションも魅力ですよね。

「無謀なアクションも、トムが“何でもやりたい!”という好奇心の塊だからこそ。そして、イーサンは“俺が行く!”と率先して踏み込んでいくキャラクター。トムとイーサンのDNAがマッチしている感じがありますよね」

──吹き替え収録時に思い出深かったシーンはありますか?

森川智之◆「未来のために、今はたくさんのことに興味を持って、アンテナを張っていきたい」

「3作目で、イーサンが所属する秘密諜報組織・IMFから追われる立場になるシーンがあります。逃走の途中、イーサンは相手を混乱させるため、局長の声まねをして無線を使うんです。局長役の吹き替えは、石塚運昇さん。僕は、石塚運昇さんのまねをするのがその時初めてでした。なるべく石塚運昇さんの声をイメージして演じました。毎回見るたびに、われながら『うまく石塚運昇さんに聞こえるなー』と(笑)。それはもう、吹き替えならではですよね」

──トムに影響されたことは?

「トムはトップクラスの俳優なので、彼の声の一端を担っていることはすごく光栄です。トムはファンサービスも世界一です。ジャパン・プレミアでレッドカーペットを一緒に歩かせていただくことがあるのですが、ファンの方々一人一人に、分け隔てなく丁寧に対応しているんです。そういったハリウッドの大スターを目の前にして、だからこそみんなに愛されるんだなと感じました。中でも、5作目『~ローグ・ネイション』の時、炎天下にもかかわらず、トムは2時間以上フォーマルウェアでサインをして、ファンと写真を一緒に撮っていました。後で『トムは汗をかかないの?』と通訳の戸田奈津子さんを通じて尋ねたら、『僕は汗をかかないよう訓練しているんだ』って。すごいなと思いました。作品のために、水中でも息を止められる訓練をしたとも聞きます。いろんな準備を徹底したプロなんだなと感じました」

──吹き替えの魅力とは?

「昨今、映画の映像は凝ったものになっています。3Dや4DXもあります。字幕で字を追っていると、映像や細かいお芝居のニュアンスを見逃してしまったり、どこを目で追えばいいのか分からなくなってしまうこともあると思います。そういった作業をなくして、映画により入り込めるところが、吹き替えの魅力なのかなと思います」

──声優としては、吹き替えのお仕事の魅力はどんなところでしょう?

「映画が本当に大好きなので、吹き替えのお仕事の魅力は、最新の映画が楽しめるところ(笑)。僕は元々、声優を目指していたわけではなく、スポーツでけがをして声優の世界に入ったんです。ただ、そのおかげで大好きな映画に関われています。そういう意味では、挫折したけれど、僕はこの仕事は天職だと思っています。何にでもなれちゃいますからね。トム・クルーズにもなれれば、キアヌ・リーブスにもなれる!(笑)。すごい仕事をやらせてもらっているんだなと思います」

──吹き替え、アニメでの声のご出演と多忙な日々を送る中、自ら声優事務所を立ち上げている森川さん。今後、やってみたいことはありますか?

「日本語の音声表現を学校教育に取り入れたいです。国語の授業はあるけれど、音声表現に関しては朗読があるぐらいかと思います。一方で、英語の授業では、はっきり伝わるようにとボディアクションを付けた表現を教えています。日本語には、そういった表現の授業がありません。現代では、SNSを含め、音声を発しないコミュニケーションツールが増えているからこそ、音声表現の授業が必要になってくるのかなと思っているんです。日本語はなくなることはないと思いますが、言葉を発して表現することができない人は増えるかもしれない…。そんなふうに、いろんな未来を想像しています。未来のために、今はたくさんのことに興味を持って、アンテナを張っていきたいと思います」

森川智之◆「未来のために、今はたくさんのことに興味を持って、アンテナを張っていきたい」

【作品情報】

森川智之◆「未来のために、今はたくさんのことに興味を持って、アンテナを張っていきたい」

「ミッション:インポッシブル」シリーズ5作品(森川智之吹き替え版)
洋画専門チャンネル ザ・シネマ
7月21日 午後2:00~深夜2:00

イーサン・ハント(トム・クルーズ)がミッションに挑む大ヒットスパイアクションシリーズ5作品(「ミッション:インポッシブル[テレビ朝日版]」、「M:I-2[テレビ朝日版]」、「M:i:Ⅲ」、「ミッション:インポッシブル/ゴーズト・プロトコル」、「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネーション」)を森川智之の吹き替え版で一挙放送する。

【プロフィール】 

森川智之 Toshiyuki Morikawa 
1月26日神奈川県生まれ。みずがめ座。O型。トム・クルーズ、キアヌ・リーブスなどの吹き替えを担当。アニメ「クレヨンしんちゃん」(テレビ朝日系)の野原ひろし役としても知られる。今秋から放送のアニメ「警視庁 特務部 特殊凶悪犯罪対策室 第七課 –トクナナ-」に声の出演予定。

取材・文/仲川僚子 撮影/Marco Perboni



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