津田健次郎が語る、「“金曜夜の1時間をすてきな時間に”という言葉が作品に携わる人たちの共通言語」――「最愛」インタビュー2021/10/28
TBS系で放送中の金曜ドラマ「最愛」。殺人事件の重要参考人となった実業家・真田梨央(吉高由里子)と、梨央の初恋の相手であり事件の真相を追う刑事・宮崎大輝(松下洸平)、そして、あらゆる手段で梨央を守ろうとする弁護士・加瀬賢一郎(井浦新)の3人を中心に展開するサスペンスラブストーリーです。
2006年、梨央が青春時代を過ごしていたのどかな田舎町で失踪事件が発生。15年後、時代を牽引する実業家となった梨央の前に事件の関係者が現れたことにより、当時の記憶とともに封印したはずの事件が再び動きだします。本作は、「アンナチュラル」「MIU404」(ともに同系)のプロデューサー・新井順子さんと演出・塚原あゆ子さん、そして「夜行観覧車」「リバース」(ともに同系)で2人と組んだ奥寺佐渡子さん、清水友佳子さんの脚本による完全オリジナルのサスペンスラブストーリー。第2話の放送を終え、SNSでは早くも考察合戦が盛り上がりを見せています。
今回は、松下洸平演じる大輝の上司で、警視庁捜査第一係長・山尾敦役の津田健次郎さんを直撃。声優として数々の作品で活躍されてきた津田さんが、役柄の魅力や本作の見どころについて語ってくださいました。
――津田さんの本作への参加が発表された際は、大きな話題となりました。あらためてオファーを受けた際のお気持ちをお聞かせください。
「お声がけいただいた時は、出させていただけるんですか?という驚きでいっぱいで、すぐに『ぜひ!』とお答えさせていただきました。ドラマ作品にがっつりレギュラー出演するのが久々だったので、緊張感とワクワクどちらもありましたね」
――オファーの理由は聞かれましたか?
「はい。どうやら前から僕のことを知ってくださっていて、オファーをしてくださったみたいです。それ自体が光栄ですし、すごくうれしかったです」
――初回放送を終えての反響も大きかったと思います。緊張感もあったとのことですが、ホッとされた部分もありますか?
「周りの人々やSNSのフォロワーさんから『面白い!』というコメントをたくさんいただけたのでうれしかったですね。実は第1話が放送される前日からソワソワしてたので、ポジティブな反響をたくさんいただけて本当にホッとしました(笑)。気を緩めずに緊張感を持って引き続き撮影に臨もうと思っています」
――山尾に対しての反響ツイートも多く見られましたが、役柄はどのように作り上げられているのでしょうか?
「衣装合わせの時に、新井Pや塚原監督とどんな役柄にするかを話す機会がありました。作品自体がかなりシリアスですし、ほかの登場人物もかなりシリアスなお芝居になるので、お二人には『山尾と佐久間由衣さん演じる桑田仁美くらいしか(作品を)緩めるところがないんです』って言われたのを覚えています。ほんわかした部分を担っていただけたらとのことで」
――なるほど。どんなところでそのほんわかした部分を表現されているのでしょうか?
「山尾はサブバッグを持っているんですけど、刑事の無骨さとはかけ離れたかわいいデザインの物を持っています(笑)。個人的にも刑事がかわいい物を持ち歩いているという設定はめちゃめちゃ面白いと思いましたし、こういう細部まで丁寧に作られるところにヒットメーカーたる所以があるんだなと感じました」
――その設定はオファーの時からご存じだったのでしょうか?
「衣装合わせの時に初めて知りました! 意外な設定だったのでテンションが上がりましたね」
――そうだったんですね! 新井Pと塚原監督の作品は役柄の設定が細かいイメージがあります。
「そうなんです。一言に刑事といってもたたき上げの圧のある人なのか、エリートでシュッとした人なのかなど、いろいろな刑事像があると思うのですが、監督からいただいた資料を拝読したら山尾の設定が細かく書かれていて。台本には全然出てこないんですが、子どもがいることや、出身大学まで書かれていました。その中に『キャリアではない』という設定も盛り込まれていて、ノンキャリアの頂点で出世のほぼ手前まで登りつめているとか、派出所勤めだったからたたき上げだとか。いわゆる“現場刑事”のパワーもありつつ、管理職としての組織を動かす力もあるんだという要素をそこからくみ取ることができました」
――撮影では、松下さんと佐久間さんとご一緒されるシーンが多いかと思います。お二人の印象はいかがでしたか?
「僕は2人とも初対面だったので、撮影前からお会いできるのを楽しみにしていました。いざお会いするととてもフレンドリーで大変ありがたかったです。楽屋ではお二人ともマイペースにおだやかに過ごされているのですが、本番になるとピリッとした緊張感をまとわれているギャップがあります」
――作中でのそれぞれとの関係性についてはどう考えられていますか?
「松下さんは重いドラマを背負っていくポジションなので、どうしてもシリアスパートが多くて、山尾との立場の違いみたいなものも今後出てくると思うんです。現場の刑事とそれを監督している上司の差とか…?(と、ネタバレを気にしながら慎重に言葉を選ぶ津田さん)。その立場の違いという部分でもドラマを作っていけたらなと個人的に思っています。上司と部下という関係性はある意味どこにでもあるものなので、皆さんにとって親近感があるのではないかな」
――確かにそうですね。佐久間さんとのシーンについてはいかがでしょうか?
「桑田とは視聴者の皆さんが和めるような“緩さ”を作っていければと思っています。佐久間さんがちょっとすっとぼけた役を作り出してくれているので、2人でほほ笑ましいシーンが作れたらいいな。第1話では『桑…田』という、桑田の名前をあまり覚えてないことを表現するシーンがあったのですが、あれ、実は台本には書いてなかったんです。そんな設定があったら面白いなと思って、テスト撮影の時にアドリブでやらせていただいたら採用してくださいました。遊びどころも含めていろいろなことに挑戦できればなと思っています」
――あれ、アドリブだったんですね! テストでいきなりアドリブを入れた時の佐久間さんの反応は…?
「それが佐久間さん、本当に素晴らしかったんですよ! 打ち合わせなしで『宮崎と桑…』って止まってみたら、『田です!』って即座に反応してくださって。そのやりとり自体が本当に楽しかったですし、お芝居の醍醐味だなとも思いました」
――ほかにも津田さんが自らアドリブやアイデアを出したところはありますか?
「かわいいペンを持って行きました(笑)」
――かわいいペン!(笑)。それはなぜでしょうか?
「衣装合わせの時に、先程お話したサブバッグの演出プランをいただいたので、僕もそういう細かい部分を大事にしようと思って、勝手に通販でかわいいペンをめちゃくちゃ探して3種類くらい買ってみたんです。それを塚原監督に『これ持ち込んでもいいですか?』って聞いたら、『どうぞ!』っておっしゃってくださって。今後映るかどうかは分からないのですが、『どうしてボサボサした感じの刑事がこんなにかわいいペン持ってるんだろう?』って視聴者の想像力が膨らむ一つの要素になればいいなと思っています。子どもの物を持ってきちゃったのかな、とか想像が広がるのが楽しいだろうなって思うんですよ」
――意外なギャップは気になっちゃいますね。
「小道具として取り入れさせていただくことで、“無骨なのにかわいい物を持てる人”という設定を実感することができるので、お芝居をする上でも助けられています」
――小道具一つでお芝居にも影響があるんですね。
「ありますね! あと、小道具担当のスタッフさんがのど飴をいっぱい入れてくださっているんです(笑)。ドラマの中で出てくるのど飴なのでパッケージとかも僕専用になっているのですが、そういうところでもスタッフさんの愛を感じています。せっかく作ってくれたんだから絶対どこかで舐めようと思って、ありがたくお芝居で使わせていただきました。山尾はきっとのどが弱いんだな、とか思ってもらえたらいいな」
――ご自身からアドリブや演出アイデアが飛び出すということは、現場の雰囲気もかなり良いのかなと思っています。
「すごく良いと思います。僕は過去パートの撮影は参加していないので少し遅れて加わったのですが、皆さん本当に温かいし優しいしフレンドリーに迎え入れてくれました。スタッフの皆さん一人一人が時に緊張感を持って、時に冗談を飛ばし合いながらとても楽しそうにドラマを作っている様子が第一印象だったので、こういう現場はきっといい作品が生まれるだろうなと確信しました」
――オリジナル脚本ということで、最後まで結末が分からない展開が待ち受けていると思います。このような作品でお芝居をされてみて、いかがでしょうか?
「もちろん僕も結末を知らないので、この後どうなるんだろうって思っていて、視聴者の皆さんと同じ目線で楽しめています。台本を読んで初めて知ることも多くて『え!? まじで!!』って思うことあります(笑)。話ごとのお芝居に関しては『今の僕の立ち位置は合っていますか?』と聞くようにしていて、先を知る新井Pや塚原監督のジャッジに委ねています」
――なるほど。個人的に新井P&塚原監督の作品は台本が映像化された時の驚きが大きいのですが、津田さんは第1話の映像を見てどんな感想を抱かれましたか?
「第1話って視聴者の心をグッとつかまなきゃいけないと思うのですが、そのためのテンポの良さと緩急の付け方には驚きました。そして、白川郷が僕の頭の中で想像していたよりも遥かに奇麗に描かれていて、こういうところで大輝は育ったのかという自分の想像力にもつながりました。田舎と都会の対極性も素晴らしかったですね。田舎の子が東京で頑張っていたり、15年後には真っ赤な口紅を塗って出てきたりするわけじゃないですか。そこでなるほど…!と思わされましたし、具体化される良さを感じました」
――ご自身の想像力にもつながったとのことですが、第1話を見て以降、ご自身のお芝居の方向性が変わることもあったのでしょうか?
「ありました。こういう演出が目指したいのかとあらためて理解できた部分があって、じゃあもっと僕はこうしてみようとか、このシーンはテンポを上げてみようとか、僕ができることはどんどんやっていこうと思いました。役者にとっても第1話が大きな指針になっていると思います」
――そうなんですね! ちなみに津田さんが考える塚原監督の演出の魅力はどこでしょうか?
「塚原監督は現場ではずっとおおらかでいらっしゃって、丁寧に柔らかく演出をされています。もちろん緊張感があるシーンではビシッとされますが。先ほどのペンのアイデアに関してもそうですが、基本的にキャストが作ってきた役のイメージも大事にしてくださるのが本当にありがたいなと感じています。何事もまずは一回受け入れて、OKならOK、違ったら違う、としっかり伝えてくださるんです」
――現場でもかなりやりとりする機会があるんですね。
「はい。時間がない中でもしっかり会話する時間を割いてくださいます」
――塚原監督はじめ、皆さんが丁寧に作品作りに向き合われている様子が伝わります。
「これは余談なのですが、実は塚原監督から直筆のお手紙をいただいたんです。その手紙に『見てくださる皆さんの金曜日の夜1時間がすてきなものになるように、私たちは頑張っていきたいと思います』と書かれていたんです。それで視聴者の方の時間をものすごく大切にされている思いが伝わりましたし、とにかく丁寧さと切実さがこもっていました。長い時間をかけて立ち上がっている企画なのは存じ上げていましたし、そんな中でお手紙までいただいたら、“そりゃめちゃくちゃ頑張りますよ!”という気持ちでいっぱいになりました…」
――心のこもったお手紙! それはキャストさんの士気が一段と上がりそうですね…!
「そうなんです。この前、公式Twitterをチェックしたら、その投稿にも同じ言葉が書いてあって、『金曜夜の1時間をすてきな時間に』という言葉は作品に携わる人たちの中での共通言語なんだとあらためて実感することができました。キャストもスタッフも同じ思いで一つのものを作っている現場で、本当に素晴らしいなと日々感動しています」
――貴重なお話をありがとうございます! では、ぜひ最後に今後の見どころを教えてください!
「とにかく毎話展開が激しい作品です。第1話からすでに『え? 死んだの!?』みたいな展開だったじゃないですか(笑)。なので展開には毎話注目してほしいですし、キャラクターでも『この人こういう人だったの!?』ってことが今後たくさんあると思います。その分、1話見逃したら分からなくなってしまう可能性が高いんですよ…。でもほら、最近は見逃してしまったらTVerとかParaviというのがあるんですよねぇ〜(と、楽しそうに笑みをこぼす津田さん)。ぜひ1話も見逃さず、そして復習もしながら見ていただけたらうれしいです!」
【プロフィール】
津田健次郎(つだ けんじろう)
アニメ、洋画吹替、ナレーターなどの声優業・舞台や映像の俳優業を中心に、映像監督や作品プロデュースなど幅広く活動している。主な出演作は、NHK連続テレビ小説「エール」(語り)、「新・情報7days」(TBS系/ナレーション)、「呪術廻戦」七海建人役、「遊☆戯☆王デュエルモンスターズシリーズ」海馬瀬人役、「スター・ウォーズシリーズ」カイロ・レン役など。
【番組情報】
「最愛」
TBS系
金曜 午後10:00〜10:54
TBS担当 A・M
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