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橋部敦子、第39回向田邦子賞贈賞式で喜びを語る! 受賞作「モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~」主演・小芝風花も祝福2021/10/26

第39回向田邦子賞贈賞式/橋部敦子&小芝風花

 優れた脚本作家に贈られる向田邦子賞(向田邦子賞委員会・株式会社東京ニュース通信社主催)の第39回贈賞式が10月25日、東京都千代田区の帝国ホテルで行われた。 第39回の受賞者は4月6日に行われた選考会で、橋部敦子氏に決定。テレビ朝日で2021年1月23日~4月3日に放送された「モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~」で受賞を果たした。

 贈賞式では、橋部氏が受賞の喜びを語り、選考委員・池端俊策氏から賞状の授与が行われた。東京ニュース通信社・代表取締役社長の奥山卓からは、本賞の特製万年筆と副賞の300万円が贈られ、ドラマを担当したテレビ朝日の内山聖子エグゼクティブプロデューサーもお祝いのスピーチで祝福。さらに、主演の小芝風花がゲストとして駆けつけ、さらなる活躍に期待を込めて受賞を称えた。

第39回向田邦子賞贈賞式/池端俊策選考委員、内山聖子エグゼクティブプロデューサー
第39回向田邦子賞贈賞式/橋部敦子
第39回向田邦子賞贈賞式/橋部敦子

【橋部敦子 受賞スピーチ】

この「モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~」という作品は、自分が思い込んでいた世界から解放されていく女の子をやりたいというところから始まりました。ジャンルとしてはホームドラマですが、今ホームドラマを書かせていただくことが、テレビドラマではなかなかやりづらい中、皆さんのアイデアをいただきながら、主人公がものとコミュニケーションが取れるという設定を加えていき、そしてもともと私が描きたいと思っていたことが、より一層際立つ企画になって、自分が描きたいと思うことを込めさせていただいた作品でした。「モコミ~」という作品を書かせていただく場を与えていただき、本当にありがとうございました。

土曜深夜枠のドラマだったんですけど、ずっと前から書いてみたいという思いがあった枠であり、初めて本気で「ナイト枠で書かせていただきたいです」と自分から言った企画でした。また、自分が描きたいと思ったことを、プロデューサーやスタッフの皆さんがとても尊重してくださって、役者の皆さんも自分の想像を超えた素晴らしい方に集まっていただけて、本当に幸せなお仕事でした。その上、このような賞までいただけて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

4月に受賞の発表があり、本当にうれしくて、興奮と、今まで25年以上脚本を書いてきて、いろんな方のお顔が思い浮かんだりとか、一つ一つの作品を思い出す時間というか、その喜びとか、いろんな思いに3カ月くらい浸っていました。ちょうど6月いっぱいまで休む予定だったので、その間、1人で夢心地な中、向田邦子さんのエッセーや脚本などの作品をあらためて読み返した時に、今まで気付いていなかった、私の言葉では表現し尽せないようなすごさをあらためて感じまして、向田邦子賞という賞の重みを感じました。

そんな期間にどっぷり浸かって、今日のこの日というのは淡々としているというか、賞をいただいたのが遠い昔のような感じだったんですけど、またこの会場に入った瞬間、そして向田邦子さんのお写真の前に立たせていただいて、またじわじわと喜びが湧き上がっている今です。このたびは本当にありがとうございました。

第39回向田邦子賞贈賞式/小芝風花

【「モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~」主演・小芝風花 祝福コメント】

橋部さん、このたびはすてきな賞の受賞おめでとうございます。橋部さんとはこの作品で初めてご一緒させていただいたのですが、すごく自然に人の心に寄り添ってくださるような作品を描かれる方なんだなと思いました。

自分の世界にずっと閉じこもっていた萌子美(モコミ)が、初めて外の世界に触れることで変化する姿、それに伴ってギリギリを保っていた家族の形が少しずつ崩れていく姿、そしてそれをみんなが受け入れて一歩ずつ踏み出していく姿を本当に繊細に丁寧に描いてくださっていて、その繊細さがきっと見ている方を優しく包み込んで、「萌子美も勇気を出して一歩を踏み出したから、私も頑張ってみようかな」と、優しく背中を押してくださるような作品になっているんだなと思いました。

これからも橋部さんが描かれる繊細な人間模様をたくさん見たいですし、橋部さんが描かれる魅力的な人物をまた演じられるように、頑張りたいなと思います。このたびは本当におめでとうございます。

第39回向田邦子賞贈賞式/橋部敦子&小芝風花

【質疑応答】

Q. 脚本家になろうと思った理由は?

橋部 「最初は積極的な理由ではなく、本当はダンサーになりたかったんですけど…」

小芝 「えー!!」

橋部 「短大を卒業した後にOLをやっていたんですけど、月~金曜まで仕事が終わった後や、土・日もレッスンに通い、いろいろなイベントやショークラブ、テレビ番組のバックダンサーとか、活動を始めた時に膝の故障で断念しまして。OLを辞めて地元の名古屋を出て、ダンサーになるために東京に行く時に勘当されたみたいなことになったので、あっけなくダンサーの夢が破れた時に、すぐに名古屋に帰ることができなかったんですね。その後アルバイトをしながら、たまたま演劇の活動をしている人から『やってみる?』と声がかかって脚本というものに出合いました。もともとダンスをやっている時はテレビを見る環境ではなかったので、ドラマも映画も見なかったし、漫画や小説が好きだったわけでもなかったんですけど、なりゆきの中で脚本に出合い、その時に『面白い! これで食べていきたい!』と思うようになりました」

Q. 向田邦子賞をどうしてもとりたかったという具体的な理由を教えてください。

橋部 「脚本家になった時は、向田邦子賞という賞は雲の上の賞というか、自分には無関係な賞だと思っていたんですけど、04年の作品で初めてノミネートしていただいたんですね。その時にびっくりして、自分でも可能性があるんだ、と思った瞬間、意識に上がって、絶対にいつかいただきたい賞とずっと思ってきました。受賞した後にデスク周りを整理していたら、“モコミで向田邦子賞をとる”と書いた付箋が出てきて、たぶんこの作品の脚本を書き始めた時に書いたと思うんですね。ただ全く記憶になくて。その時は賞に意識を上げて『とるぞ!』という決意をその付箋に書いたと思います。やはり向田邦子賞は、脚本家なら欲しいと思う賞です」

Q. 向田邦子作品で好きな作品は?

橋部 「『阿修羅のごとく』が好きです。人間の描き方が、同時に笑いと皮肉とか、温かさとシビアさとか、真逆の要素、二つの視点を同時にシーンに浮かび上がらせるところが素晴らしいなと思います」

第39回向田邦子賞贈賞式/橋部敦子&小芝風花

Q. 主人公・萌子美を演じるにあたり、どんなところに気を付けて演じましたか?

小芝 「最初台本を読ませていただく前に、次の役はものや植物と会話ができるという特殊な能力を持った役ですと言われて、コメディー作品なのかな? どういう作品なんだろうと思っていたんですが。いざ台本を開いてみると本当に繊細で、花やものとしゃべれるというのも、はたから見たら特別な能力なんですけど、萌子美にとっては当たり前の日常の中のことと描かれていて。それがすごく新鮮で、萌子美はその能力を周りの人には理解してもらえないということも理解しながら、苦しみながら自分の殻に閉じこもってしまった子でもあるので、気を付けて演じないと難しい作品なんだろうなって、私の中でもすごく挑戦でした。まだ役をつかみきれていないまま本読みを終えて、『私が演じた萌子美どうだったでしょうか』と橋部さんにヒントをいただきに行ったんですが、『(脚本を)書き終えたら皆さんのものなので、好きなように演じてください』と言われて、すごくうれしい半面プレッシャーで。萌子美という人物が秘めている、何を考えているんだろう、何を思って植物と対話しているんだろう、というのが無限に出てくるような、繊細かつシンプルに描かれている台本なので、橋部さんの意図をくみ取れているかとか、思い描いていた萌子美像になっているのかというのを不安ながらに進んでいった記憶があります。でも今こうしてお話を聞かせていただいて、“モコミでこの賞をとる!”と書いてくださった作品で本当に受賞される橋部さんの強さもそうですし、繊細ながらに前を向いて進んでいく力強さを台本からも感じ取れたので、今日この場にいられることがすごくうれしいです」

Q. 小芝さんの演技を見てどう感じましたか。

橋部 「本読みという場で『これからはお任せします』とにっこりお伝えしたんですけど、やはり現場で監督やほかの役者さんとのやりとりの中で、萌子美という役を作っていってくださるという信頼しかなかったので、その時はまだ迷ってらっしゃるなという印象でしたが、それに対して不安はなかったです」

Q. 小芝さんにとって「モコミ~」はどういう作品でしたか?

小芝 「最近はコメディー作品に携わらせていただくことが多くて、表情や感情が分かりやすい、喜怒哀楽がはっきりしている役が多かったのですが、萌子美に関しては、セリフも多いわけではなくて。だからこそちょっとした表情の変化で、見ている人に伝えたい思いと受け取ってもらえるものが、丁寧に演じないと変わってきてしまいそうな気がして、丁寧に台本を読み込んで、監督とも細かいところまで話し合って進めました。私の中では今まで演じたことのない繊細さの持ち主の役だったので、挑戦させていただいた作品でした」

第39回向田邦子賞贈賞式/橋部敦子&小芝風花

【プロフィール】

橋部敦子(はしべ あつこ) 
1966年生まれ。愛知県出身。93年に第6回フジテレビヤングシナリオ大賞で「悦びの葡萄」が佳作に選ばれ、95年に「SMAPのがんばりましょう NAKED BANANAS」で脚本家デビュー。主なテレビドラマ脚本に「僕の生きる道」「僕と彼女と彼女の生きる道」「僕の歩く道」(いずれもフジテレビ系=関西テレビ制作)、「A LIFE~愛しき人~」(TBS系)、「僕らは奇跡でできている」(フジテレビ系=関西テレビ制作)、「知ってるワイフ」(フジテレビ系)などがある。

<向田邦子賞とは>

故・向田邦子さんがテレビドラマの脚本家として、数々の作品を世に送り出し活躍してきた功績を称え、現在のテレビ界を支える優秀な脚本作家に贈られる賞として、1982年に制定。主催は「TVガイド」を発行する東京ニュース通信社で、選考は歴代受賞者らによる向田邦子委員会が担当。前年度に放送されたテレビドラマを対象に、選考委員がノミネート作品を選定。本選を含めて4回の討議を経て受賞作品を決定している。選考委員は池端俊策氏、冨川元文氏、大石静氏、岡田惠和氏、井上由美子氏(向田邦子賞受賞順)。


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