バラエティー界・真の王者は何だ? ~録画視聴データから見るバラエティー番組分析 2017-2018~2018/08/28
今回は「TVガイドWeb」で毎回紹介している関東で27万台を超えるレグザクラウドサービス“TimeOn”の録画視聴データから、バラエティー部門の番組に焦点を当てて分析を行ってみたい。ドラマ以上に視聴習慣が番組選びに大きな影響を与えるのがバラエティー番組なので、より正確な視聴傾向を探るため今回は2017年7月から2018年の6月までの過去1年間にわたるデータをもとにランキングを作成するという暴挙(?)を試みた。丸1年間のあらゆるバラエティー番組の中で最も録画視聴された番組は何なのか? レギュラー番組も全ての放送回を個別にカウントした、そのベスト30が以下のランキングである。(ポイントは1位を100とした場合の比率。以下同様)。
2位以下を大きく引き離してトップに立ったのは、昨年12月31日に放送された日本テレビの「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!大晦日年越しスペシャル!絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!」であった。言わずと知れた人気番組で、大みそかに放送されるようになってからすでに12年、「NHK紅白歌合戦」の裏というポジションを逆に利用してすっかり年末の定番プログラムとして定着した。もともとが「紅白」の裏であるから年始にかけて録画で見られる可能性も高く、繰り返し視聴に堪える密度の濃い番組作りがされていたことが人気の大きな要素だろう(DVDが高いセールスを記録していることでも、バラエティーとしての質の高さは証明済みである)。現在放送されている全バラエティー番組中、断トツのベストプログラムだと言っていいと思う。
1位とは大きく差がついているものの見事2位につけたのは、今年2月放送の「アメトーーク! コロチキ・ナダルSP」(テレビ朝日)。雨上がり決死隊の司会で芸人たちのくくりトークが人気の番組だが、この回は芸人なのにいじられると怒るコロコロチキチキペッパーズのナダルをフィーチャーした人気企画「ナダル・アンビリーバボー」の第3弾だった。そして3位には「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ)で昨年8月に放送されたこちらも人気企画「出川哲朗はじめてのおつかい夏休みSP」がつけた。いまや最も数字を持っている男ともいわれる出川哲朗が、現在のポジションに定着するきっかけはこの「イッテQ!」での活躍であったろう(「イッテQ!」はほかにもレギュラー出演者を次々ブレークさせている。名伯楽・内村光良の面目躍如である)。4位以降も僅差で「アメトーーク!」と「地球の果てまでイッテQ!」がズラリと並び、ベスト30に限って言えばこの2番組以外にはわずかに「リンカーン 2017秋 第10回芸人大運動会」と「水曜日のダウンタウン」2回分がランクインしているのみ。上位2番組の強さを思い知らされる。
続いて各番組の期間中(2017年7月~2018年6月)の平均録画視聴ポイントランキングを見てみよう。過去1年間視聴者に最も愛されたバラエティー番組ベスト30がこれである。
総合トップに立ったのは「世界の果てまでイッテQ!」である。僅差で「アメトーーク!」が2位につけた。またTBSの「水曜日のダウンタウン」も90%台と高い水準で3位につけている。そして「日曜もアメトーーク!」に続いて5位と6位には、マツコ・デラックスMCの「月曜から夜ふかし」と「マツコの知らない世界」が並ぶ。「月曜から夜ふかし」は以前は「アメトーーク!」と並んでトップ争いをしていたのだが、ここへきてちょっと落ち着いてきた印象。逆に「マツコの知らない世界」は、ここ1年でグッと安定感を増してきている(ちなみにかつては「マツコ・有吉の怒り新党」もトップグループの常連だったが、「かりそめ天国」に代わってからは大きくパワーダウンしている。やはりバラエティーはタレント力だけでは成功しない)。8位にはこの春で終了したフジテレビの「めちゃ×2イケてるッ!」が堂々のランクインで有終の美。10位の「陸海空 地球征服するなんて」も、枠移動する前の「陸海空 こんな時間に地球征服するなんて」の15位とともに大健闘のランクインと言っていいだろう。表の下の方になると、深夜枠の番組も多くランクインしている。またベスト30まで見渡すと適度に局もばらけて、NHK総合が「ブラタモリ」と「LIFE!~人生に捧げるコント~」の2本、テレビ東京も「ゴッドタン」「乃木坂工事中」の2本をランクインさせている。
今度は逆に特番・単発バラエティーの録画視聴ランキングベスト30を見てみよう。単発の特別番組のほかに、レギュラー番組の枠拡大バージョンやスペシャルバージョンも含むランキングである。
トップの「ガキの使い~」も変則的とはいえレギュラーのスペシャル版と考えれば、上位番組はほぼ人気レギュラー番組のスペシャル版が占めている。5位の「リンカーン 2017秋 第10回芸人大運動会」も今は放送していないが、以前レギュラー放送していた「リンカーン」のスペシャル版であり、その意味ではいわゆる言葉通りの単発バラエティーで最高位となったのは16位の「土曜プレミアム 人志松本のすべらない話」(フジテレビ)ということになる。以下、21位「M−1グランプリ2017」(テレビ朝日)、24位「うわっ!ダマされた大賞2017」(日本テレビ)、26位「よゐこの無人島0円生活2017」(テレビ朝日)と続く。どれも単発シリーズとして実績のある番組ばかりで、やはり長年の蓄積がものを言っている(それにしてもどの番組もそうだが、特に「日曜もアメトーーク!」は2時間SPが多すぎる。2回に1回は拡大スペシャルという感じである)。
こうして見ると大みそかの「ガキの使い~」といい、「世界の果てまでイッテQ!」といい、録画視聴で強い番組は視聴率でも強いんだなということが分かる。実際上位に並ぶ番組は、バラエティーとしてのクオリティー、密度が高く、他番組のやらないことをやる個性がある。蓄積と積み重ねが重要であるのと同時に、不断のアイデアと情熱がバラエティーの命なのだということを改めて感じる。
今回は、東芝レグザのデータを用いてバラエティー番組を分析してみたが、やはり視聴率だけでは分からない視聴のされ方が読み取れて興味深い結果となった。視聴率では日テレバラエティーの独り勝ちに見える現状も、何かのきっかけで状況は変わりうる。今後もテレビのさまざまな楽しみ方をお伝えしていきたいと思う。
文/武内朗
提供/東芝映像ソリューション株式会社
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