大河ドラマ初出演の福士誠治「井上馨は栄一たちに無理難題を吹っ掛ける役(笑)」。吉沢亮との共演は「心地の良い時間でした」2021/10/08
第29回(10月3日放送)の大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合ほか)では、明治政府に出仕することになった渋沢栄一(吉沢亮)が、各省の垣根を超えた“改正掛(かいせいがかり)”で貨幣や郵便制度の確立に日々まい進する姿が見られました。そんな中、栄一の上役となったのが大蔵省で大蔵大輔を務める井上馨(福士誠治)。意外にも大河ドラマ初出演という福士誠治さんから、大河ドラマへの思いや、井上の人物像、明治編の見どころを伺いました!
――大河ドラマ初出演とのことですが、「青天を衝け」に出演が決まった時の気持ちを教えてください。
「朝ドラや時代劇などいろいろ出演させていただいていますが、大河ドラマは初めてだったので、喜びがありました」
――福士さんはこれまで数々の時代劇に出演されていますが、撮影で大河ドラマと時代劇の違いを実感したことはありましたか?
「井上は明治時代から本格登場なので、分かりやすくいうと、ちょんまげがないということですね(笑)。 時代劇では、カツラをかぶって扮装(ふんそう)をすることでスイッチが入りますが、今回は付けたヒゲをカットしていただいて、衣装を着るという感じで、撮影に入るまでの流れが違いました。大河ドラマという意味では、それまでの歴史を感じます。栄一がここまでに至る時間の経過に加えて、昨年から撮影している時間とスタッフさんのグルーヴ感があって、大河ドラマがロングドラマであることを実感します。僕自身も“パリ編”や自分が出る直前のシーンなどを視聴者として見ていたので、ドラマを楽しんでいた人が出演するような面白い感覚があります」
――出演が決まる前に「青天を衝け」をご覧になっていたとのことですが、出演が決まった後、作品の見方は変わるものなのでしょうか?
「見方は変わらないはずなのですが、僕の心はちょっと興奮していますね(笑)。自分が井上で出演することは置いておいて、栄一をどう動かしたら面白いのかなと考えながら見ていました」
――「青天を衝け」での井上はどのような人物でしょうか。
「僕が演じる井上馨は激動の時代に登場する人物。世の中が変化する時代に出演すると思うと、台本を読むたびに興奮していました。栄一とは明治に入ってから関わることになります。僕の中では明治時代は、現代に近いイメージがあるのですが、井上は武士として生きてきた人でもあるので、洋服を着ていても武士道を忘れずにいる印象です。資料や文献に井上はすぐ怒る人だったと書かれていますが、栄一とともに世の中を変えるという大きい野望を持っていた人物かなと。『青天を衝け』の中では、栄一たちに無理難題を吹っ掛ける役(笑)。ちょっと調子のいいところというか、“やれといえば、やれるだろう”という強引さも井上にはあるのかなと感じています」
――強引さを演じる時に意識していることはありますか?
「栄一といる時には、周りの空気を読まずに自分のペースで物事を進めていく“鈍感さ”や我の強い部分を出すよう心掛けています。監督とも相談したのですが、あまりこじんまりしたくないなと。若いころは世の中を固める上で自分の意見が正しいと強く思っていますが、後半は年齢と共に地位を確立し、井上自身も安定したところはあるのかなと考えて演じています」
――少しずつ変化していくんですね。
「そうですね。時代や環境が人を変えるというか。少しずつ変わっていったのか、落ち着いていったのか、トゲがなくなったのか…そういう部分が井上にもあるかなと。井上自身、次の世の中を作っていく人たちにバトンを渡さなければいけないという心も芽生えて変化していったのではないでしょうか」
――井上は、栄一に無理難題を吹っ掛ける役どころということですが、栄一を演じる吉沢さんとのどんなシーンが印象に残っていますか?
「僕は吉沢亮という人のファンなんです。一緒にやっていて楽しいですし、気持ちが飛んでくる俳優さんなので素晴らしい。第30話(10月10日放送)で井上がある難題を吹っ掛け、それを成し遂げた栄一が、『やった、やった』と喜んでいる井上をよそに寝てしまうシーンがあったのですが、テストで僕が豪快にやっていたら、本番ではそれに合わせて少しお芝居も変えてきてくれて。気持ちをくみ取って芝居に反映してくれるので、とても心地の良い時間でした」
――明治政府の人々は、伊藤博文(山崎育三郎)や大隈重信(大倉孝二)をはじめとする濃いキャラクターがたくさんいて楽しそうですが、現場の雰囲気はいかがですか?
「コロナ禍なので、数年前の現場の雰囲気とは異なりますね。緊張がほぐれることもあるので、マスクをしながらですが、お話をさせていただくこともあります。また、ドラマの中では多数方言が飛び交うのですが、監督から『ここから自由にお願いします』と言われた時に『方言でのアドリブはできないね』と盛り上がった記憶があります」
――方言はやはり難しいですか?
「僕が話す長州弁は方言のレベルでいうと、そんなに難しい方ではないと思うのですが、本番で自由にと言われると大変ですね。気を抜くと標準語のイントネーションになってしまうことがあるので、瞬間、瞬間で集中しています」
――明治政府の人々といえば、先日、伊藤博文役の山崎さんが「井上は声がでかくて暑苦しい」とおっしゃっていたのですが、そういう部分はあえて意識されているのでしょうか?
「そうですね。井上を裏があって含みのある人間にはしたくなかったので、豪快さと声の大きさは、ずいぶん意識的にやりました。政治家なので言葉とは裏腹に持っている信念や方向性を隠し持っている部分はあるんですが、声に発した時には、『これが俺の意見だ!』という真っすぐなところを見せたかった。また、先ほども言ったように、井上は怒りやすいと言われていたのですが、台本のト書きに怒ると書かれていなかったので、そんな部分もどこかで出せたらなと思っておりました」
――また、井上は伊藤と一緒にいるシーンが多いと思いますが、伊藤を演じる山崎さんの印象はいかがでしょうか?
「最近は育ちゃんと呼ばせていただいています(笑)。初共演が第17回(6月6日放送)の井上と伊藤が明治時代になる前に船の中で英語を話す場面。大河ドラマで初めての撮影なのに長い英語のセリフで、『大変だね』って共感し合いながらシーンを進められたので仲間意識が芽生えて、再び出会った時には『よかったね、日本語だよ』と言い合いました(笑)」
――井上と伊藤はどんな関係だと思われますか?
「伊藤と井上が2人で話すシーンが度々あるのですが、心の中で信頼している部分や内に秘めた親友感が出せたらいいなと。僕の中では井上より伊藤の方が切れ者の印象がある。年上の井上を信頼しつつ、手玉に取れるのが伊藤で、手玉に取られていると思っていない井上が、自分の意見だと思って真っ向勝負している。そんな2人の関係性を出せたらいいなと思っています」
――福士さんが感じる明治編の魅力を教えてください。
「明治になると、現在使われている言葉がふんだんに出てきます。江戸からあった飛脚が明治に郵便となり、その仕組みができたことや、紙幣が生まれて、それを扱う会社がやがて銀行という名前になったということが、栄一の人生を通して知ることができる。視聴者の皆さんは、現代日本の基盤が明治時代に生まれたことをドラマで実感できて、教科書で読んでいた知識とはまた異なる感じで腑に落ちるのではないでしょうか。そこが僕はかなり面白いと思っています。自分の大好きな授業にだけ参加して単位をとる感じですかね。ワクワクする瞬間が多くて、そういう興奮はなかなか味わえないんじゃないかなと。現代とのつながりを強く感じられるのが明治編の見どころだと思います」
――歴史が続いているのを実感できますよね。
「はい。あらためて明治は全然遠くない時代だと感じますし、おじいちゃんやひいおじいちゃんがこういう時代に生きていたのかなと想像できるので、それには何とも言えない興奮を覚えます」
――そんな中で井上の注目ポイントはありますか?
「井上も社会に貢献したんだぞ、というところは見てほしいですね。井上は、政治家として働いていたと思ったら、辞めて事業を起こし、そしてまた政治家に戻った人物。それは今考えても優秀な人ですよね。ガサツで自分本位という部分もありますが、日本を少しでも良くするために栄一の力が必要なんだと理解していて、視野の広い部分を持っていることも演じていて感じます。人間味があって、自分の器を理解した上で勝負する井上は魅力的だと思います」
――ありがとうございました!
【番組情報】
大河ドラマ「青天を衝け」
NHK総合 日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム・NHK BS4K 日曜 午後6:00~6:45
NHK担当 K・H
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